入浴中の事故を防ぐためには、事前に脱衣所や浴室を暖めておく、湯温41度以下で10分まで、浴槽から急に立ち上がらない、食後すぐや飲酒後・医薬品服用後は避ける、といった注意も必要だ(写真:Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

 幅広い年代に衝撃を与えた、中山美穂さんの「入浴中の不慮の事故」。より寒暖差が大きい、昨今人気のサウナでも、リスクはあるのだろうか。AERA2025年1月13日号より。

【写真】死亡事故が起こったサウナの現場はこちら

*  *  *

 冷え込みが強まるこの時期、温かい風呂で心地よいひとときを過ごしたい人は多いだろう。しかし注意すべきは「ヒートショック」。温度の急激な変化によって血圧が大きく上下し、体に悪影響を及ぼすのだ。

 突然死の原因となることも多い。厚生労働省人口動態統計(2023年)によると、浴槽内での溺死及び溺水による死亡者は、6909人。交通事故死亡者数3573人の2倍近くにもなる。

若年層にも潜むリスク

 例年、ヒートショックで亡くなる人の9割は65歳以上だが、

「逆にいうと、1割ほどは65歳未満の方なのです」

 と若い世代へ警鐘を鳴らすのは、医師で東京都市大学人間科学部教授の早坂信哉氏。4万人以上の入浴を医学的に調査し、“お風呂ドクター”の異名を取る早坂氏は、ヒートショックには「山型」と「谷型」の2種類あると語る。

「リビングから寒い脱衣所に行くと、血圧が上がります。その状態で42度以上の湯につかると、さらに血圧が上がり、血管に負担がかかるんです。これが山型で、動脈硬化の進んだ高齢者などが心筋梗塞や脳卒中を発症する危険性が高いのです」

 一方の谷型とは、

「入浴中は血管が拡張して血圧が下がっていきます。そのうえ風呂で立ち上がると、水圧から解放されること、座った状態から立つことの2点によって、血圧が下がるのです。そのため頭に血液が回りにくくなり、立ちくらみなどを起こすことがあります。若い方でも起こりやすいので注意が必要です。お風呂場でスマホを使う人もいるようですが、調査によるとスマホを見る人の入浴時間は平均25分。見ない人の平均13分の約2倍にあたり、谷型ヒートショックを招く要因となります」

 立ちくらみ程度なら大丈夫だろうと、あなどってはいけない。

「意識を失い、おぼれたり、転倒して手すりや蛇口などに頭をぶつけたりするリスクがあり、最悪の場合は死につながります」

次のページ
水風呂には注意が必要