水風呂には注意が必要

 ところで入浴における温度の変化といえば、最たるものは昨今老若男女に流行(はや)りのサウナに違いない。ヒートショックで倒れる心配はないのだろうか。

 全国的な調査結果は公表されていないが、福島県の郡山地方広域消防組合が13年から22年のサウナ関連の搬送例101人の調査結果をまとめている。

「典型例として挙げられるのは、サウナ後の冷水浴中に、意識レベルが低下したというケース。これはすべての年代で起きています」(同組合総務課)

 ムック本『名医がやっている 正しいサウナの入り方』の監修も務める前出の早坂氏は言う。

「サウナと水風呂で交感神経を刺激した後に外気浴で涼むと、副交感神経が強く働いてリラックスした気持ちになれる。この状態を『ととのう』というわけです。でもサウナと水風呂では、温度差が60度ほどもあり、急激に血管が収縮して、場合によっては血圧が50mmHg以上も急上昇します。血管収縮で血流を良くするメリットがある一方で、体を痛めつける側面もある。体力のある若い人でも不整脈を引き起こす危険性があるのです」

 それを防ぐためには、

「水風呂には入らなくていい。入らなくてもサウナの健康効果は得られます。もし水風呂に入るなら“かけ湯”ならぬ“かけ水”をするようにしてください」

 公益社団法人日本サウナ・スパ協会の担当者もこう説明する。

「サウナ室へは、かけ湯を5回以上して、シャワーで頭を洗い水気をよく拭き取ってから行くようにお願いをしています。営業店は更衣室も浴室も暖かくしているので、温度差もなくヒートショックのリスクは低くなると思います。また、サウナから出て水風呂に入るなら、心臓から遠い足の先から徐々に水をかけ、慣らしてからゆっくり入るようにしていただくようにお願いしています」

 ととのう前にヒートショックになることは避けたいものだ。(ライター・菊地武顕)

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