【鴻上さんの答え】
おこたんさん。大変ですね。学校は、いじめ問題には非常に敏感なのに、自分たちのパワハラ問題に関して鈍感というか、「根本的に根絶しようという動きがない」という文章は、現場を知っている人だから書けることだし、切実な問題だと思います。
「何らかの動きを起こすべき」なのか「このまま静観するべきなのか」、「鴻上さんのお考えをぜひお聞かせください」ということですが、僕の考えは、「何らかの動きを起こすべき」です。
でもそれは、「正義感」とか「使命感」というものとはちょっと違います。
「どっちが自分にとって納得できるか」という理由です。
「自分は、もう学校を異動したから関係ない、若い女性教員がパワハラに苦しんでもしょうがない」という考え方を取った時の心の平安と苦しみと、「学校を異動しても、納得できない。若い女性教員が心配だ。何らかの行動を起こそう」と思った時の平安と苦しみを天秤にかけて、どっちが、自分にとって重要かを判断するのです。
簡単に言えば、静観した苦しさと、何らかの行動を取った苦しさの、どっちが大きいかです。
はっきりしているのは、どっちをとっても苦しいです。でも、じっくり考えて、どっちがより苦しいかを判断するのです。
僕の性格としては、静観した方が苦しみが大きいと考えます。静観すると、苦しみは少ないように一瞬感じても、それがずっと何年も長く続くのです。低温火傷のような譬えがいいでしょうか。関係ないと思っているのに、心の奥底で、ずっと気になって、苦しくて、気がつくと、大火傷になっているという感じです。