パワハラを続ける女性教員に苦しんでいるという50歳の小学校教員の女性。自分自身は異動して離れたものの、同僚だった教員がパワハラを受け、それを問題として取り上げない校長に対しても歯がゆく思い、行動するべきか迷っているという。そんな女性に、鴻上尚史が伝えた「行動したほうが苦しみが少ない」の真意とは。
【相談244 】
小学校でパワハラが横行しており、自分はどうすべきか迷っています(50歳 女性 おこたん)
いつも鴻上さんの「ほがらか人生相談」を拝読しています。あまりほがらかではない相談ですが、ぜひ鴻上さんのアドバイスをいただきたいと思い、お手紙を書きました。どうぞよろしくお願いいたします。
私は小学校の教員をしています。昨年まで勤務していた学校で職員間のパワハラ問題がありました。被害者はまだ20代の若い男性教員です。加害者は同じ学年を組む中堅の女性主任教員です。生徒指導や教科指導で悩んでいる男性教員に対して、「そんな指導ではだめだ」「センスがない」と否定や批判を繰り返し、教えるのではなくダメ出しばかりだったそうです。
また、その叱責を含む学年会が長時間に及び、自分の仕事をする時間が取れずに追い詰められていったそうです。その男性教員は、まじめで明るく子供とよく遊ぶいい先生でした。夏休み前には精神的に苦しくなり「辞めよう」と決意をし、校長に伝えたそうです。そこからその二人の問題がほかの職員にも伝わり、私も大きなショックを受けました。二人が教室で学年会をしていたため、ほかの職員が知る機会がなかったようです。私や一部の職員は彼を守ろうと管理職に訴え、その女性主任に指導をしてもらいました。男性教員に謝罪する場を設け、管理職の前で謝罪したそうです。
管理職からは、今後教室で学年会は行わないようにという約束がされました。それでもしばらくすると、またパワハラ的な言動が復活してしまいました。夜遅い時間に職員室で叱責されることも多かったそうです。それを見ていた先生方は、嫌な気持ちになったそうですが、あまりの勢いに面と向かって言い返すことはできなかったそうです。また、校長は女性主任が指導力があり学級経営も上手だったので、今後出世するであろう彼女の経歴に傷をつけたくないといっていました。そのため何とか校内でことを収めようと思っていたようです。
今年、私は学校を異動しました。男性教員も何とか踏ん張って一年間勤め、他校に異動しました。今ではのびのびと勤務できているそうです。ところが、またあの女性主任が今年も同じようにパワハラ的な言動を数名の同僚にしているというのです。自分よりも若く、まだ経験年数も多くない、自信があまり持てない人に対してきつい言葉を投げかけ、批判を繰り返しているそうです。職員室の雰囲気は悪く、居心地よくないそうです。そしてパワハラを受けている数名のうちの一人が、私が昨年一緒の学年を組んだ若い女性教員なのです。彼女から直接話を聞き、守ってあげられないことを歯がゆく感じました。
私の友人も夫も、それぞれ校長によるパワハラ行為で精神的に追い詰められ、心身に不調をきたし、休職したり降格を経験したりしました。その時も校長はパワハラ行為を認めず、処罰されませんでした。退職後も別の学校で普通に仕事を続け、生活もしています。パワハラを受ける教員は弱い立場にあることが多いです。被害を受けた本人が訴え出ないと、市教委は動けません。仮に訴え出ても、もみ消されるのではないかとも思っています。信頼できる教育委員会の先生に相談をしましたが、「実際にその現場を見てみないと指導が難しい」と言われました。
学校は子供のイジメ問題には非常に敏感で、「いじめられる子に非はない」といいます。それなのにパワハラ問題には根本的に根絶しようという動きがないのです。いびつな人間関係の職員集団では健全な学校運営、子供への温かい教育はできないと思います。
私は今、「何らかの動きを起こすべき」なのか「このまま静観するべきなのか」迷っています。今パワハラを受けている先生方も女性主任も、まだ数年は異動をする予定はありません。世の中を見ていると、思い切って声をあげた側が損をすることが多いように思います。鴻上さんのお考えをぜひお聞かせください。