被災地への支援や寄付、児童養護施設への支援が評価され、「HEROs AWARD 2024」を受賞した那須川天心さん(写真:日本財団提供)

《長谷川隆治さんが選ぶ5人》

「神童」と呼ばれたキックボクシングからプロボクシングに転向し、現在はWBOアジア・パシフィック・バンタム級王者の那須川天心さんは、被災地や児童養護施設などへの支援を続けています。2024年春には被災した石川県の高校生からSNSのDMを受け取り、卒業式にサプライズで参加してエールを送っていました。まだ26歳ですが、次世代の若者を支援し、自分らしい生き方を見つけられる社会の実現をめざして、さまざまな活動を続けています。

 プロラグビー選手の川村慎さんたちが始めた「よわいはつよいプロジェクト」は、アスリートが心の不調と向き合うことをオープンにし、学校や企業などでも講演。メンタル不調や精神疾患に関する偏見を減らすことを目指しています。

 18年平昌五輪でスキージャンプ女子の銅メダルに輝いた高梨沙羅さんは、23年5月に雪山の自然環境を次世代に残すためのプロジェクト「JUMP for The Earth」を立ち上げました。世界を転戦して地球温暖化の影響による雪不足の深刻さを痛感し、クリーンアップ運動や高校などで講演活動も行っています。

 プロ野球横浜DeNAの筒香嘉智さんはスポーツ指導のアップデートを目指して、23年に出身地の和歌山県橋本市に2億円の私費を投じて総合スポーツ施設を造りました。筒香さんは19年には日本外国特派員協会で会見し、罵声を浴びせるような野球指導について問題提起。自ら少年野球チームも設立し、子どもの将来を一番に考えた指導を実践しています。

 女子陸上界のレジェンド、福士加代子さんは香川で「笑って走れば福来たる駅伝」など誰もが楽しめるイベントを企画・運営し、地域を元気にしています。

 日本はボランティア参加率も低く、寄付文化も根付いておらず、『世界人助け指数』では世界ワースト2位です。そんな中、発信力も行動力もあり、語る言葉には重みもあるアスリートのみなさんが社会貢献に取り組む意義はとても大きいです。

(構成/編集部・深澤友紀)

日本財団経営企画広報部部長:長谷川隆治さん(はせがわ・りゅうじ)/1971年生まれ。アスリートの社会貢献活動を推進する日本財団の「HEROs」に関わる(写真:日本財団提供)

AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号