日本財団公益事業部シニアオフィサー:竹村利道さん(たけむら・としみち)/1964年生まれ。日本財団で障害者の就労を支援。NPO法人ワークスみらい高知の理事長(写真:日本財団提供)
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 日本は高齢化による労働力不足や社会保障費の増大など、多くの問題を抱えている。そうしたなか、今後ますます重要性が高まる福祉・社会貢献の分野で、注目すべき人は誰か。日本財団公益事業部シニアオフィサー・竹村利道さん、同財団の経営企画広報部部長・長谷川隆治さんに聞いた。AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号より。

竹村利道さん・長谷川隆治さんが選ぶ2025年「福祉・社会貢献」で注目の10人はこちら

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《竹村利道さんが選ぶ5人》

 2025年、日本は国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎え、働き手が減少する一方、社会保障費が増大する「2025年問題」に直面します。そんななかで、多様な就労困難者への支援をリードする人たちに注目しています。働きたくても働けなかった人たちをサポートして就労につなげる取り組みです。

 障害者の就労については、企業の障害者法定雇用率は段階的に引き上げられ(24年に2.5%、26年には2.7%)、全国に約2万の就労移行・継続の支援事業所があるなど手厚い施策がありますが、ひきこもりや出所者、難病患者などの就労困難者には、公的なサポートはありません。これまで支援を受けられなかった人を支援し、就職につなげる、「ダイバーシティ就労」を推進する取り組みが始まっています。

 岐阜市で就労支援事業を展開する一般社団法人サステイナブル・サポート代表理事の後藤千絵さんは、仕事と治療の両立に困難を抱えるがんサバイバーや性的マイノリティーの人たちに就労支援を行っています。また、東京都の認証ソーシャルファーム事業所の一般社団法人アプローズの光枝茉莉子さんも、シングルマザーや、介護、療養が必要な家族がいる人を受け入れて、生花やアレンジメントの受注販売、観葉植物・花壇の手入れなどを行っています。東京都江戸川区(斉藤猛区長)では、ひきこもりや障害などで働くのが難しい人を支援し、金魚養殖や銭湯など地域の事業の継承を担ってもらう事業を推進しています。

 障害者雇用が広がっても、発達障害や精神障害のある人たちの就職にはまだ壁がありますが、「ニューロダイバーシティ」の推進をリードしている日経BP総合研究所主任研究員の小板橋律子さんにも注目しています。

 私自身も障害者の就労支援の事業所を経営していますが、親や学校の教員、支援者らが障害児者の可能性を狭め、自立を妨げていることが少なくないと感じます。そんななか、「アーツカウンシルしずおか」を拠点に、障害者など正規の美術教育を受けていない表現者の作品を扱う「アウトサイダーアート」のキュレーターの櫛野展正さんは障害者が自身で考える機会をつくり、可能性を広げています。

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