そして、ラスト100メートルで、熊崎が覚悟を決めて飛び出すと、田口も負けじと必死の形相でスパートをかける。
大歓声のなか、両者はそのままほぼ同時にゴールに飛び込んだが、最後はスピードの差がモノを言い、熊崎が胸の差で勝利。チームを過去最高の総合4位に押し上げた。
中野孝行監督がいい意味で「ずる賢い」と評した熊崎は、絶妙の駆け引きを「せこいレースだけど、自分の小さなプライドよりも、チームの順位が大事。監督にもどんな形でもいいから、1秒でも勝てと言われた。自分だけではない。(ほかの)9人分の走りもかかっている」とアンカーの責任感を強調した。
一方、「やられてしまった。本当に悔しい」と僅差で敗れたことを悔やみに悔やんだ田口は、翌年9区で熊崎と再対決。今度は3秒差で勝利している。(文・久保田龍雄)