ではどうしたらいいのか? この解決には、氷山をイメージしてみてください。
氷山は、海上で目視できる白い山の部分の大きさよりも、水面下の見えない部分の体積の方が大きいことがあります。
この会話でいう「第一声」はいわば、海上にでている氷山の一角でしかなく、本当に言いたいことの多くは、海中に眠っている体積の部分にあるのです。ですので、第一声は「すべての情報ではない」と考え、より重要な海中に眠る情報を取りにいきたいのです。
例えば、先ほどの会話であれば、
「部長、私、来期、課長になれますかね?」
「おお、どうしたの急に。なにかあった?」
先回りせず、話を聞く姿勢を見せる返事をすれば、相手に本当に話したい話題を打ち明けるチャンスを渡せることができるので、「実は……」と切り出し始めてくれるのです。
とはいえ、すべての第一声に対して、「本当に言いたいことは別にある」と想像するのはなかなか難しいですよね。ここで手がかりになるのが、相手の表情と間合いなんです。
例えば、この部下の場合、「私、課長になれますかね?」という言葉を発した時に、どんな表情をしていたでしょうか?
きっと、浮かない表情、あるいは、笑ってはいない表情を浮かべていたかもしれません。そして、「課長に……なれ……ますかね?」と何となく含みのあるような間合いを作っていなかったでしょうか?
相手の言葉尻だけに気を取られていると、相手の本当に言いたいメッセージを掴み損ねてしまうのです。
私が営業マンだった平成の時代には、お客さまの話を伺う時に「話半分」で聞くべし、という先輩からのありがたい?教えがありました。これは、お客さまが伝えてくれる情報を信じすぎると、良い商品やサービスが提供できなくなる。少し相手の言葉を疑うぐらいでちょうどいい、という教えでした。
少し意地悪に聞こえるかもしれませんが、私たちは相手の言葉に対して、謙虚に受け取り過ぎなのかもしれません。
この、「相手の言葉を額面通りに受け取らない」は、「期待しすぎない技術」のひとつのポイントになる考え方になるでしょう。
ちなみに、相談事をしたときにかけられる
「期待してるよ」
「頑張ってね」
といった言葉にプレッシャーを感じている人にも朗報です。
前述の通り、相手はあなたの言葉を額面通りに受け取って、返答しているだけかもしれません。気にしすぎず、時には受け流してしまいましょう。