『人間関係の悩みがなくなる 期待しない習慣』(朝日新聞出版)

※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 相手の真意を推し量るのが、難しい。自分の期待に相手が応えてくれなくて、辛い。2万人以上のリーダーを対象にコーチングやリーダーシップの指導を行ってきた林健太郎さんは著書『人間関係の悩みがなくなる 期待しない習慣』(朝日新聞出版)の中で、社会で抱えがちな悩みに、優しく助言をしてくれる。「言葉を額面通りに受け取らない」「相手の事情を想像する」など、心を軽くできる思考法を著書から一部を抜粋・再編集して解説する。

言葉を額面通りに受け取らない

 会社でよくある話ですが、例えば上司である部長に部下がこんなことを聞いてきたとします。

「部長、私は来期、課長に昇進できるでしょうか?」

 あなたが部長だったとしたら、こんなふうに答えるかもしれません。

「○○さんの今のパフォーマンスだったら、問題ないんじゃないかな。社長もこの前、相当期待していると言っていたから、頑張ってくれよ」 

 これ、一見、会話として成立しているように見えますよね。しかし、ちょっとリスキーなんです。

 何がリスキーかというと、「課長に昇進できる?」という部下の言葉に対して、上司は「できる・できない」という解決策を伝える受け答えをしています。

 これを「ソリューション・モード」と読んでいます。

 私たちは、なぜか自動的に、相手の望みに応えたいという衝動に駆られる傾向があるのですが、これをいかに食い止められるかが、知恵の働かせどころです。

「言葉尻を捉える」という言い回しがありますが、これはつい相手の言葉を額面通りに素直に受け取ってしまうクセのことを指しています。

 部下は本当に課長になりたかったのでしょうか?

 人は第一声で本心を言わずに、なるべく簡単な話題から伝えて、相手の様子を見ながら本題を切り出すことがあります。第一声に本質的なメッセージがあると考えるのは大きな間違いかもしれないのです。

 例えば、この会話の中で部下はこんな相談をしたかったとしたらどうでしょうか。

「この会社では、課長になると報酬体系が変わり、残業代が出なくなる。つまり、実質の手取りが減ってしまう。妻からは、家計のやりくりが難しくなるので、今の手取りを確保できる会社への転職を勧められているが、自分としてはできればこの会社で働き続けたい。そこで、どうしたらよいかを信頼する部長に相談したい」

 こんな相談が潜んでいることは、部下の第一声からは計り知れませんよね。ですので、第一声だけに反応して先回りするのは危険なのです。

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真意を読み取るコツ