サケは海に棲むが産卵時には川に上がる。そこから、海水と淡水の両方に棲める魚でカルシトニンの活性が高いのではという発想がひらめき、ふだんは川に棲み産卵時に海に行くウナギを調べたところ、「ビンゴ!」であった。このひらめきが、将来的に骨粗鬆症の治療薬の開発につながっていくのであるが、こうした発想も研究の成果も、臨床医である私とは異文化である動物学者、生化学者、薬理学者、製薬会社との共同研究だったからこそ得られた賜物だ。異文化との付き合いなしにはなし得なかったことである。
年をとればとるほど、長年の思い込みや凝り固まった意識で、目にウロコが張り付きやすくなる。でも、異文化と付き合うことは何歳になってもできる。恐れずに、これまでの自分が知らなかった世界に一歩を踏み出すことをおすすめしたい。目からウロコが落ちたとき、その世界がどう見えるか。わくわくするだろう。