先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA dot.」で2024年12月6日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。
【写真】2010年のソフトバンクの入団会見では山下の隣に後のスター選手が…
* * *
残念なニュースが球界を駆け巡った。2010年にドラフト1位でソフトバンクに入団し、楽天や中日でもプレーした山下斐紹(あやつぐ)被告(32)がコカインを含む粉末を所持したとして、名古屋地検が麻薬取締法違反(所持)の罪で起訴していたことが分かった。
12月4日に名古屋地裁であった初公判で、山下被告は名古屋市内の自らが経営する飲食店でコカインを含む粉末を所持していたという起訴内容を認めた。検察側は懲役1年を求刑して即日結審。弁護側は執行猶予付きの判決を求めた。
中日でプレーしていた時に指導していたコーチは「何をやっているんだか。情けないですよ」と憤りを口にする。山下被告はどんな選手だったのだろうか。
「森友哉、阿部慎之助に引けを取らない才能」
山下は習志野高で「強打の捕手」として名を轟かせ、10年にソフトバンクのドラフト1位指名を受けた。この年、ソフトバンクの2位指名は、その後チームの主力となる柳田悠岐。育成枠で指名された選手の中には、同学年の甲斐拓也、千賀滉大(現メッツ)、牧原大成と、のちに球界を代表する名プレーヤーたちがいた。
他球団のスカウトが振り返る。
「習志野高の時に山下を何度も視察に行きましたが、打てる捕手としての才能は森友哉(現オリックス)、阿部慎之助(現巨人監督)の高校時代と引けを取らない。タイミングの取り方、コンタクト能力、パワーとすべてが高水準でした。みっちり練習すれば、とんでもない選手になるなと。あの世代の高校生捕手の中では間違いなく№1でした」
将来の正捕手として期待されたが、1軍に定着できないまま月日が流れていく。この間に正捕手に上り詰めたのが、入団当時は無名の甲斐だった。ソフトバンクを取材していたテレビ関係者は振り返る。
「当時のコーチが『肩の強さは別として、野球センスで言えば、甲斐より山下の方が上だった』と話していました。ただ、山下は練習や試合に集中しきれていないように感じました。遊びたい時期だったというのもあったかもしれません。練習もやらされているような感覚に見えた。一方で甲斐はファームの試合後も、泥だらけになってブロッキングなど地道な練習を繰り返していた。『僕は下手なのでやるしかないんです』と語っていたのが印象的でした。甲斐は1軍の正捕手をつかんだ後でも、上を目指す貪欲な姿勢が変わらない。2人の野球人生で明暗が分かれたのは必然だったと思います」