「勢いで行動に出て反省する」
育成入団の甲斐が球界を代表する捕手に大ブレークしたことで比較され、周囲の視線が厳しくなった面もあったかもしれない。山下はソフトバンクに7年在籍して、わずか37試合出場と結果を残せないまま、楽天にトレード移籍した。新天地1年目の18年に自己最多の43試合出場で打率.198、2本塁打、9打点をマーク。7月24日の日本ハム戦では延長11回にプロ初アーチとなるサヨナラ2ランを右翼席に放っている。
楽天で当時チームメートだったOBは山下についてこう語る。
「素行不良とか色々な噂は聞いていたんですよ。ソフトバンク時代はあまり良いイメージがなかったんですけど、チームメートになったら普通にいい奴でした。結果が出ていない選手に声を掛けたり、チームを盛り上げていました。ソフトバンクで思うようにいかず、新しい環境でやり直そうという気持ちがあったんじゃないですかね。あと、ベンチで感情的になって相手に過激なヤジを飛ばした後に、『あれはまずかったですかね』って気にしていたことがあった。勢いで行動に出てしまった後に反省する。ピュアというか幼いんですよね。引退後は連絡を取らなくなったんですけど、ニュースを見てびっくりしました」
楽天で3年間プレーしたが、20年オフに戦力外通告を受けて退団。翌21年に中日に育成契約で入団すると、6月に支配下に昇格したが結果を出せず、22年オフに2度目の戦力外通告を受けて現役引退を決断した。
前出の中日時代のコーチが振り返る。
「打撃センスは良いものを持っていました。飛ぶコツをつかんでいる。天性の才能でしょうね。性格も明るくて周りを盛り上げるムードメーカーでした。人懐っこくて先輩に好かれる。ただ、自分の軸を持っていない印象がありましたね。コロナで緊急事態宣言が発令されていた21年に球団が禁止していた外食に出掛け、10日間の謹慎処分を受けたことがありました。プライベートでの行動を含め、『野球で絶対に成功する』という覚悟は正直足りなかった。素質はあっただけにもったいなかったですね」