放送法第4条は廃止するべき
放送法第4条の問題については、本コラムの「高市辞職より報道の自由の本質論を」(2023年3月14日配信)、「テレビが絶対に報じない福井照・沖縄北方担当相の深刻なスキャンダル」(2018年3月5日配信)などで詳しく論じてきたので、それらを参照していただくとして、結論だけ紹介すると、放送法第4条が法規範だとすれば、これは憲法違反であるというのが圧倒的通説だということだ。したがって、第4条は廃止するか、倫理規範であるという解釈を明確にすべきだということになる。
なお、テレビ局が真実を報じないことの背景には、放送法第4条の政治的公平条項以外にもいくつかの問題がある。
そのうち、最大の問題は、スポンサー企業の不祥事などについての報道が非常に甘いということだ。
また、スポンサー企業の事実上の宣伝を報道番組や情報番組、バラエティ番組などで行っていることも大きな問題である。
さらに、BS放送がほとんどテレビショッピングのためにあるような状態になっているのも、電波が公共の財産であることから見ると問題だ。
そして、自主規制のための要となる番組審議会のガバナンスがほとんど機能していないテレビ局があることも非常に重大な問題である。
以上のような問題意識を前提に、必要な改革を例示してみよう。
1.放送法第4条を廃止すること
2.仮に第4条を廃止しないのであれば、同条は違反に対して罰が伴う「法規範」ではなく、違反しても罰がない単なる努力義務を定めた「倫理規範」に過ぎないという解釈を政府の見解として明確化すること
3.「政治的公平」を守るための手段は、政府の規制や行政指導ではなく、各社の自主規制であることを明確にすること
4.「政治的公平」は、全ての政治勢力についての放送時間を平等にするというような機械的な規制で行うべきではなく、政府と政権与党の実質的一体性にも配慮し、さらには、露出機会の少ない少数勢力の意見をより手厚く放送することなども含めて、実質的な公平を各社ごとに判断すべきだという理解をテレビ局全体で共有すること
5.テレビ局に設置される放送番組審議機関(番組審議会)のガバナンスを抜本的に改め、委員の人選、委員の任期(最長期間の設定を含む)、委員の独立性担保(スポンサー企業や取引先と関係の深い者の排除を含む)、議事録の公開、委員長による記者会見などについて厳格な自主規制ルールを整備すること
6.スポンサー名と受領した金額を公表すること
7.政治家、政党、企業などから寄せられた意見、苦情などは、全てネット公開すること
8.上記7について、テレビ局側の対応を含めて、放送番組審議機関に報告を行い、審議を受けること
9.視聴者から寄せられた意見をネット公開すること
10.自主規制で、報道番組の最低放送時間(放送時間全体の最低3分の1、ゴールデンタイムでの一定割合)などを導入し、公共性を担保すること
11. 9.が機能しない場合は、法律による規制を検討すること
12.電波オークションの導入について検討すること(とりわけ、テレビショッピングに大半の放送時間を費やしているBSを第1弾とすることが考えられる)
以上は例示に過ぎないが、これらの改革によりテレビ放送の公共性の維持と報道機関としての機能の回復を行うことで、ネット上の似非情報を正すカウンターパワーになることが期待できるのではないだろうか。