「カープは戦争で甚大な被害を受けた広島復興の象徴。球団が何度となく経営危機に陥っても、市民・ファンが支え続け乗り越えてきた。ビジネスを考えれば多額の放映権料が入るのは望ましい。しかし、それよりも地元を大事にする姿勢を支持したい」(広島OB)
NPB12球団が運命共同体と考えれば、カープに対して“閉鎖的”と批判の声があるのも理解できる。しかし戦後すぐの1950年に球団が生まれてから、地元とともに歩んできた道のりは険しく重いものだった。「たる募金」によって経済的に支えられた時期もあった。広島以外の人間には理解できないほどの強い絆が存在する。
「ファンクラブ運営方式も独自。定員制を設け、自動継続ではなく毎オフに抽選で会員が決定する。会員特典の最大のうりは本拠地チケット先行販売。『多くの人々に公平にチケットが行き渡って欲しい』と言う思いが見える」(スポーツマーケティング関連会社関係者)
球団としては地元やファンクラブ会員という「家族」を優先する姿勢を崩さない。また、人気球団だけに人数制限を設けなければ利益も増えるはずだが、サービス低下を懸念しての措置だという。
「ファンクラブやチケット販売方式に関しては批判を頂くこともある。そこは最善の方法を模索、できることから改善したい。しかし球団としての方針は今後も変わらないだろう。地方のスモールマーケット球団だからこそ、地元や家族を大事にしたい」(広島関係者)
球団歌「それ行けカープ」は広島では老若男女を問わず歌うことができる。「広島の国歌」と呼ぶ人もいるほどで、カープと地元の繋がりは野球という域を大きく超えたものになっている。米国の野球や欧州、南米のサッカーチーム同様に生活の一部と言っても大袈裟ではない。
社会現象にもなった「カープ女子」の熱気は薄くなっても、地元や家族が支え続けてくれる。根強い文化が生まれにくい日本のエンタメシーンで、カープの存在は貴重なものだ。