2013年、楽天が優勝を決めた瞬間、マウンドで叫ぶ田中

「1軍で通用するかとなると厳しい」

 プロ18年目で初の未勝利に終わった今年はシーズンの大半をファームで過ごした。春のキャンプは1軍スタートだったが、右肘手術から状態が上がらず、開幕前にファーム降格。3月20日のイースタン・DeNA戦に登板したが、球威や制球力が万全には程遠く、その後は4カ月以上実戦から離れ、リハビリを続けた。8月7日の練習試合・富士大戦で実戦復帰すると、ファームで登板を重ねて球数、イニング数を増やしていった。

 362日ぶりの1軍登板は、9月28日のオリックス戦。ロッテと熾烈なCS争いを繰り広げるシーズン終盤に大事なマウンドを託された。復活を飾れば最高のシナリオだったが、現実は甘くなかった。走者を背負いながらも3回までは決定打を許さなかったが、4回に集中打を浴びて3点を失い、5回も太田椋に直球を右翼ポール際に被弾。5回4失点で黒星と、結果を残せなかった。2日後に登録抹消され、1軍で再び登板する機会は巡って来なかった。

 試合を視察した他球団のスコアラーはこう振り返る。

「球の質としてはまだまだかなと感じました。経験豊富な投手なのできっちり試合を作っていましたが、1軍で通用するかとなると正直厳しい。それでも楽天が1軍昇格に踏み切ったのは、先発のコマ不足という投手事情もあるでしょうが、田中が投げて勝つことで、チーム全体が勢いに乗りたいという思惑があったのかもしれません」

 今年、楽天の先発防御率3.81はリーグワーストだった。ただし、未来は決して暗くない。早川隆久、藤井聖が左腕として球団史上初のシーズン2ケタ勝利を挙げ、若手の内星龍、古謝樹が頭角を現した。39歳ベテラン右腕の岸孝之は3年ぶりに規定投球回数に到達。荘司康誠、松井友飛は共に1勝のみと伸び悩んだが、殻を破れば大きく飛躍する可能性がある。この状況を考えると、今季未勝利に終わった田中の序列が下がるのは当然とも言える。

 スポーツ紙デスクは手厳しい指摘をする。

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「過去の実績で勝負できる世界ではない」