子ども4人が暮らしていた頃の佐藤家のリビング。食事をするこたつの横に勉強机を四つ並べていた(写真:MIKIKO)

佐藤:考えすぎてもうまくいかないし。とくに子育てなんて、常に予測不可能だから。「出たとこ勝負」も大事よね。

長女:そうそう。その時々にやりたいことをやって、結婚したり、子どもが生まれたりするタイミングがきたら、その時にまた考えればいいのかなって。そのためにはどうなっても後悔ないように、一瞬一瞬を全力で生きるしかないなと思っています。

佐藤:今は働いているお母さんが多いので、どう両立したらいいですか?という相談はよく受けるけれど、元々完璧な両立はあり得ない、と思っているの。仕事も子育ても完璧にやろうと思うのではなくて、自分の24時間のうちのどちらを優先するか、というのを子どもの年齢によって変えるといいと思う。例えば、子どもの受験期には仕事より子どもの受験のサポートを優先するとか。

「子育ては母」は古い

長女:まあ、それがうまくできればね。

佐藤:今は私も働いているのですごく感じているのが、働く時と子育てをしている時って、マインドというか精神的なものが全然違うな、と。仕事というのは、大人だけの世界で、きちっとしないといけないけれど、子育てはもう常に予測不可能だし、自分の時間を差し出してケアしないといけないという感じなのよね。仕事のように時間でスパッと割り切れない。

長女:そう考えると、医師として、最先端を走り続けながら子育てをするのは本当に難しい。男性が多い科だと、やっぱり子育てしながら働きづらい現実はどうしてもあるし。

佐藤:職場の環境は大事よね。でもやはり、子育ては女性がメインで男性がサポートをする、というのが子どもにとってはいいような気がするんだけれど。

長女:それはちょっと古い感じがする。今は女性も男性と同じぐらい社会に参画しているし、育児も男性は「参加する」とか「協力する」という意識ではないと思う。一緒に育てないと。

佐藤:そうなんだけどね。でも実際産んでみると、そうはいかないことは多いのよ。

長女:うーん。私は女医であるから、やはり女性の味方にはなっていきたいと思う。

佐藤:私も女性の味方です(笑)。だから今後、あなたが専業主婦になろうが、仕事を続けようが、応援したいと思う。

長女:そうね。私がどんな道を選んでもお母さんは全力でサポートしてくれるだろうな、という自信はあります(笑)。

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ドクターXはいらない