共同通信は、共同通信の記事を有償で提供して、生成AIを開発するソフトバンク子会社の大規模言語学習モデルに読み込ませ、日本語の生成AIをつくろうという業務提携だ。11月14日に発表となった。
そうなると、当然地方紙の分担金で運営される共同通信の記事が勝手に使われることはないのか、という疑問がわく。
それを、この案件を担当している常務理事の沢井俊光に聞くと、
「これはまだ研究の段階で、まずは共同の記事を大規模言語学習で読ませて、日本語の生成AIをつくってみようということなんです。どのような出力になるかどうか、そしてどう使えるかは、できてからの話です。サービスを公開するかどうかもまだわかりません」
地方紙や共同通信が、生成AIの会社と組んで自社の記事を読み込ませているという話を聞くと、どうしても、ヤフーの初期に、その意味を考えずどんどん記事を提供して、今のネットニュース市場のプラットフォーマー独占を招いた歴史を思いだしてしまう。
そんな不吉な予感の中、トランプの当選が決まったニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストの電子版の両者のトップ画面を比較した。今更ながら、アマゾンのジェフ・ベゾスが所有するポストの腰の引けぶりが目についた。
ニューヨーク・タイムズが、
「トランプの戦慄すべき復活
暗く傲慢な選挙キャンペーンの末、再び権力の座へ
除け者だった犯罪者は、いかに再度の大統領の座をつかんだか」
とはっきり反トランプの姿勢を打ち出しているのに対して、
ポストは「トランプ大勝利(TRUMP TRIUMPHS)」とおべっか的な駄洒落の大見出し。
ポストは、長年大統領選の際にはその投票の直前に支持候補を紙面に出してきたが、今回はカマラ・ハリスを推薦しようとした編集局をジェフ・ベゾス自身が止め、推薦候補なしとした。
失望した読者は、ポストの購読を辞め、ポストは20万人もの電子有料会員を失った。
プラットフォーマーとジャーナリズムには利益相反がある。
生成AIとジャーナリズムにも深刻な利益相反がある。
そこでしか読めないものがジャーナリズムの本質だ。それを守るのは著作権しかない。しかし、生成AIは著作物の利用は、社会的発展に寄与すれば自由だとする「フェアユース」の考え方にたっている。
この究極の矛盾はまだ解決されていない。
※AERA 2024年12月2日号
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