テレビについていけない高齢者
『ネット右翼になった父』の著者である鈴木大介氏は、晩年に“ネトウヨ”化した父親とコミュニケーション不全に陥った経験を持つ。ヘイトスラングを口にするようになった父親は、がんとの闘病の末、2019年に77歳でこの世を去った。
もちろん、今回斎藤氏を支持した高齢者らの思想は、‟ネトウヨ“とは異なる。一方で、鈴木氏自身の亡き父の姿と照らし合わせると、特定の対象に傾倒する理由が見えてくるという。
「斎藤氏シンパの高齢者が増えた要因として、新聞やテレビがいっせいに繰り広げた“斎藤バッシング”があると思います。今の高齢世代には、リベラル層が権力や社会問題を激しく糾弾する姿を見てきたことによる“アンチ左翼”の人が一定数いて、彼らは他者を攻撃する姿勢そのものに嫌悪感を抱く“アンチキャンセルカルチャー”の傾向もある。『1億総斎藤たたき』と言わんばかりのマスコミの姿に、しんどさを感じた高齢者は少なくないはずです」
また高齢者目線に立つと、テレビ番組の「見せ方」にも大きな問題があると鈴木氏は言う。
「音楽やテロップで過剰な演出をしたり、出演者たちが食い気味にトークを展開したりするワイドショーは多いですが、年配の視聴者にとっては疲れるし、話についていけない。若者のテレビ離れは以前から言われていますが、今や高齢者の取り込みにも失敗していると思います」