大統領選の選挙活動中、アリゾナ州シエラビスタの国境の壁を訪問して演説するトランプ氏=2024年8月22日(写真:The New York Times/Redux/アフロ)
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 11月5日に投開票が行われた米大統領選は、ドナルド・トランプ氏の勝利で幕を閉じた。トランプ政権下で国際関係はどう変貌するのか。アメリカの分断はさらに深まるのか。AERA 2024年11月25日号より。

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 トランプ氏が「アメリカ・ファースト」を打ち出すことにより、世界の秩序は不安定なものになる。ポピュリズムに訴えて勝利したトランプ氏は、関税の引き上げや不法移民の強制送還などを引き続き「人気取り」に利用していくだろう。それに影響を受ける国々は日本も含めて広範囲に及ぶ。

 米国はグローバルリーダーではなくなり、「わがままな国」として国際協調を乱すのは、想像に難くない。気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」からの脱退、大西洋をまたぐ重要な軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)からの脱退、国連軽視などがすでに浮上している。

マイノリティーを排除

 国際政治学者で米政治コンサルティング会社ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長はこう見る。

「トランプ氏は、多国間の(外交の)場は制約が多く、連合を構築する必要があり、アメリカは仲間はずれにされる危険性があると考える。また、彼は特に、価値観の共有に基づく同盟に不信感を抱いており、米国の大盤振る舞いにただ乗りする国によって、米国は“ぼったくられる”傾向があると考えている」

 こうしたトランプ氏の考え方は、ロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩・最高指導者らと単独で会って、「ディール(取引)」をしているかのように見せるのを好む性格にも表れている。

 国内の変貌も避けられない。渡米して大統領選を取材していたジャーナリスト、北丸雄二氏は、米国内では「格差がさらに広がる」と予想する。イーロン・マスク氏など富裕層をそろえた閣僚人事や富裕層や大企業の優遇などをみると、たとえトランプ氏に投票したとしても労働者階級や人種的・性的マイノリティーが切り捨てられていくとの見方だ。

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