夫 阪本佳郎[40]文学研究者
さかもと・よしろう◆1984年、大阪府生まれ。ルーマニアの亡命詩人の足跡を追ってルーマニア、スイス、ハワイと移動しながら調査。東京外国語大学大学院で博士号取得。著書に『シュテファン・バチウ──ある亡命詩人の生涯と海を越えた歌』。立命館大学非常勤講師
ルーマニアの亡命詩人の足跡を追って現地へ飛び、人々と付き合う中で言葉を学びました。僕の感覚ですがルーマニアの家族は友達のような関係が多いです。家父長制的なものが嫌で僕もルーマニア語で「父」の意の「タタ」を使い、息子の渚もそう呼びます。
ハワイに研究滞在した2年は、格安航空券を使ってイザベルと渚に会うために日本と往来していました。二人とも博士論文を書きながら、その日を生き切る、生き切らないとどうにも進まないという意識でした。今もイザベルは日々を生き抜く戦友。思いをぶつけ合い、渚も入って三人で話し合うことも。みんなお互いの鏡になって自分たちの生を見つめ、気づいたり反省したりして、大事な関係性です。
以前は外に向かって新たに出遭うものと積極的につながろうとしてきましたが、今は深く心通わせる人たちとのつながりを大事に撚り合わせていく方に傾いてきました。それはイザベルと渚とともに、本当の意味での日常の冒険を続ける中で気づいたことです。
(構成・桝郷春美)
※AERA 2024年11月25日号