イザベル・ファスベンダーさん(右)、阪本佳郎さん(撮影/楠本涼)
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 AERAの連載「はたらく夫婦カンケイ」では、ある共働き夫婦の出会いから結婚までの道のり、結婚後の家計や家事分担など、それぞれの視点から見た夫婦の関係を紹介します。AERA 2024年11月25日号では、大学教員のイザベル・ファスベンダーさんと文学研究者の阪本佳郎さん夫婦について取り上げました。

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イザベル29歳、佳郎30歳で結婚。渚くん(8)と3人暮らし。

【出会いは?】大学院の同級生。入学直後、互いに休日と気づかず登校。一緒に自習し、話が止まらなくなってワインバルへ。すぐ恋に落ちて付き合うように。告白なし。

【結婚までの道のりは?】佳郎のアパートの隣部屋にイザベルが引っ越す。一緒に生きていきたいと思うようになり、2年後にベルリンで結婚パーティーを開いた。結婚制度に興味はなかったが国籍が違うため法的な証明手段を得るのに婚姻届も出した。

【家事や家計の分担は?】家事は片方が忙しい時は7対3、二人とも忙しい時期は半々。週1回家事手伝いも頼む。財布は別で、互いの経済状況によって支払いの分担を話し合って決める。

妻 イザベル・ファスベンダー[39]関西外国語大学 大学教員

いざべる・ふぁすべんだー◆1985年、ドイツ・ランツフート生まれ。東京外国語大学大学院で博士号取得後、大学教員に。研究は「生殖の政治学」に焦点を当て、妊活言説と背景にある権力の力学の分析など。著書に『Active Pursuit of Pregnancy: Neoliberalism, Postfeminism and the Politics of Reproduction in Contemporary Japan』

 最初から子どもが欲しいと話していて、二人でスイスに研究滞在時に授かって日本で出産。0歳の元気な渚を育てながら、京都で講師として働き始めました。佳郎の拠点はハワイになり頻繁に行き来してくれていましたが、毎日生き延びるのに精一杯でしたね。

 渚が学校に通って生活が移り変わった今、日々お互いの交渉があります。二人とも研究に思い入れがあって大事にしたいし、生活も成り立たせないといけない。専門の「生殖の政治学」では、外から社会的な枠組みを分析的に見ます。実生活の中にいながら、当たり前とされる枠を日々問い続けるのはしんどい部分もありますが、柔軟な生き方ができる社会になればと思い、問題意識を持ち続けています。

 佳郎とは社会生活上の葛藤、世界情勢に対する考えまで気持ちを正直にぶつけ合います。世界で戦争が起き、日本社会も複雑です。そんな世の中にできる範囲で向き合い、大切な人たちと笑顔で楽しく生きる。それは日々の大事な闘いだと思っています。

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今もイザベルは日々を生き抜く戦友