2024年8月にブラジル音楽界の生ける伝説、ミルトン・ナシメントとのコラボレーション・アルバム『ミルトン+エスペランサ』をリリースしたエスペランサさん(撮影/品田裕美)

「“Write,What you wish for”(あなたが望むものに向かって曲を作れ)。ウェイン・ショーターが私に何度も何度も言ってくれた言葉ですが、ミルトンとのコラボレーションアルバムは、そのアドバイスが正しいかったことを証明したと思います。音楽的に尊敬している人、憧れている人はたくさんいて、ファンタジーとして“あの人と一緒にやったらどうなるだろう?”と想像しながら曲を書くこともよくあって。その最たる人がミルトンだったんです。彼の存在はいつも意識のなかにあったし、インスピレショーンのもとになっていました。ミルトンの息子さんからコラボアルバムの話をもらったときは、既に準備はできていたんです。そのことはミルトン自身にも伝わっていたし、だからこそこのアルバムのプロデュースを私に任せてくれんだと思います」

「ブラジルの声」と称されるミルトン・ナシメントの名曲を堪能できる

 主にリオ・デ・ジャネイロでレコーディングされた「ミルトン+エスペランサ」には、ミルトンの楽曲、エスペランサが書き下ろした楽曲、さらに2023年に逝去したサックス奏者ウェイン・ショーターの「When You Dream」やビートルズの「A Day In The Life」、マイケル・ジャクソン「Earth Song」のカバーを収録。ミルトンとエスペランサの魅力的なデュエットを中心に、ジャズ、ブラジル音楽が有機的に融合した作品に仕上がっている。

 1960年代からブラジル音楽の第一人者として活動を続けているミルトンの名曲を堪能できるのも、本作の聴きどころ。1967年に発表された「Morro Velho」は、白人の農場主の息子、黒人の雇われ人の息子の物語を描いた楽曲だ。

「選曲は大変でしたが、自分にとって意味がある曲を中心に選びました。『Morro Velho』は57年前の楽曲ですが、まったく色褪せていません。生まれ育った階級、分け隔てられた環境のなかで生まれてしまう“これが当たり前なんだ”という意識、そのなかにある悲しみは、ブラジルだけではなく、今も世界中で起きていることなので」

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