冒頭からとんねるずらしい遊び心を見せてくれた。とんねるずが提供する笑いは、今どきの芸人がやっている技巧的で繊細な「お笑い」とは一味違う。教室の隅で友達相手にふざけている男子中学生のような、軽いノリの悪ふざけ。還暦を超えた今でも、彼らの笑いに対する姿勢はデビュー当時と全く変わっていなかった。

 少し深読みするなら、「情けねえ」は『とんねるずのみなさんのおかげでした』の最終回で披露された締めの1曲だった。いわば、とんねるずにとっては、長年続いた伝説的なバラエティ番組の最後を飾った「別れの曲」でもあった。

 ライブの冒頭でそれを歌っていったんライブを終了してしまうというのは、そんな悲しい過去を振り切って新たな物語をここから始める、という彼らの決意表明であるというふうにも読める。

 ここから長いアンコールとしての本編が始まり、とんねるずの2人は力強く20曲以上を熱唱。『雨の西麻布』『ガラガラヘビがやってくる』『一番偉い人へ』などの大ヒットナンバーも次々に披露され、ライブは大盛況のうちに幕を閉じた。

 とんねるずの2人は、歌手としてのポテンシャルが高い。長身でスタイルのいい彼らは、真面目に歌ってもふざけても絵になる格好良さがある。木梨は器用で歌唱力がある。石橋は純粋な歌の上手さでは木梨にやや劣るものの、派手な動きや表情で観客を引きつける天性のパフォーマー資質がある。

 それぞれが強い個性を持ちながら、歌手として並んで同じ曲を歌うときには見事な調和を見せる。音楽活動をこれほど高いクオリティでこなせるお笑いコンビは後にも先にもいない。

 とんねるずが「とんねるずらしさ」を余すことなく見せつけた武道館ライブは大成功に終わり、ライブに足を運んでいない人にまで大反響を巻き起こした。彼らの伝説の第2章はここから始まるのかもしれない。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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