ワールドシリーズ第4戦で13打席ぶりの安打を放ち、左手は上げずにポーズする大谷翔平。大谷は第2戦で盗塁を試みスライディングした際に左肩を脱臼した=2024年10月29日、米・ニューヨーク州、ヤンキースタジアム(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
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 米プロスポーツ史上最高額での契約でロサンゼルス・ドジャースへ入団、米野球界初となるホームラン50本、50盗塁の「50-50」達成、そしてワールドシリーズ優勝。今季まさに頂点を極めた大谷翔平選手が、次に見据えるものは──。AERA 2024年11月18日号より。

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 大谷翔平という男は、いつも想像を超えてくる。

 今年、ロサンゼルス・ドジャースでの1年目を迎え、新しい環境への順応や、これまで対戦経験のないナショナル・リーグの投手への対応に時間がかかるだろうと見られていた。さらに、シーズン開幕直後には、渡米時から大谷を支えてきた水原一平元通訳に違法賭博疑惑が浮上。生活面やコミュニケーション全般で頼りにしていた人物を失い、精神的ダメージなどでプレーに影響が出てもおかしくはなかった。

 だが、大谷はそれをまるで感じさせることなく、メジャーリーグ史上初の「50本塁打・50盗塁」を成し遂げた。もちろん圧倒的な才能もあるが、逆境にあってこそ燃え上がるのが大谷である。ここ4年で3度目のMVP受賞もほぼ確実だろう。

 大谷の「50-50」達成は、アメリカで野球界のみならず、スポーツ界のビッグニュースとして取り上げられた。スポーツトーク番組では、大谷が史上最高の野球選手ではないかとの議論が盛んになったほどだ。

「50-50」よりも「二刀流」

 しかし、大谷の「50-50」達成は素晴らしいが、2021年から23年にかけての二刀流での活躍のほうが驚異的だったと、ロサンゼルスの地方紙、オレンジ・カウンティ・レジスターでエンゼルスの番記者を務め、大谷のMLB初年度から取材してきたジェフ・フレッチャーは語る。

「彼のパフォーマンスはずっと素晴らしかったのですが、エンゼルスが強いチームではなかったため、そこまで注目されていなかった。今年はドジャースに移籍したことで、より多くの人が彼を目にして注目を集めたのは嬉しいことですが、これまでの二刀流としての活躍のほうが、今年よりもはるかに印象的だったと思います」

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予測モデル超える存在