「もはやあの政治家は老害でしかない」「うちの親は典型的な老害で......」など、ネットスラングとしてよく目にする「老害」という言葉。実は辞書にも「年をとった人間が上層部にいすわって、元気な若い人の活動のじゃまになること」と載っており、少なくとも1980年代には全国紙に登場していたといいます。
今回紹介する書籍『老害脳 最新の脳科学でわかった「老害」になる人 ならない人』は、今や日本の組織や社会全体にまで大きな影響を及ぼすこの「老害」について、脳内科医の加藤俊徳氏が脳科学の視点から解き明かす一冊です。
私たちの中には、「老害をもたらす人はもともとそのような性格だった」と考える人もいるかもしれません。けれどそれは誤解であり、「老害」的な行為は脳の働きが原因で起きるのだそうです。年齢を重ねるうちに脳機能の変化によって自然と引き起こされるため、誰もが「老害脳」(同書で称する「老害」的な特徴のある脳)に陥る可能性があるというから要注意です。
さらに加藤氏は、「私たちの生きる日本社会は、秩序や肩書を重んじ、年長者を敬う文化を持っているために『老害』が発生しやすく、また『まん延』しやすいのではないか」(同書より)と指摘し、「『老害』を傍観している人も、実はそうした社会の持続に加担してしまっている可能性があることを、私たちはもう少し深刻に考えなければならない」(同書より)と記します。
たしかに、今の世の中では「老害」に対して半ば諦めのムードも感じられますが、私たち若い世代は「老害」にどう立ち向かうべきか、老害化していかざるを得ない時代をどう生きるのかについて、もう少し俯瞰的に考える必要があるのかもしれません。
そこで特に参考にしたいのが、同書の第3章から。第3章では、人が「老害脳」になってしまう原因と、脳科学的に見た9つの「老害脳」タイプなどを紹介。続く第4章、第5章では、それぞれの「老害脳」化を防ぐ方法と「老害」から自分を守る方法について記されています。
加藤氏によると「脳が中年期に入る40代、50代が、『抗老害脳』対策を始める、最も重要なタイミング」(同書より)とのこと。「意図的に新しいことに取り組む」「知らない情報にわざと接する」「口を動かし声を出す習慣を身につける」など、同書に書かれていることを意識的に取り入れ、年を重ねてもフレッシュな脳を維持し続けたいものです。
「これからの社会を明るくポジティブなものにしていくには、できるだけみんなでお互いの脳を老化させず、『老害』を与えず、『老害脳』にならないことが大切です。そうすれば、みんなが学び続け、互いを尊敬しながら成長を続けられ、経済的にも、そして文化的にも豊かで楽しい日本を、再び作ることができるのではないでしょうか」(同書より)
今後さらなる高齢化社会となる日本において、「老害」からうまく身を守る方法や自身の脳を若く保つコツなどは、知っておいてけっして損はないはずです。
[文・鷺ノ宮やよい]