平成の皇室は英王室と親しくあろうと、時間をかけて関係の構築に努めてきたと多賀さんは話す。
たとえば、平成の時代ならダイアナ元妃が交通事故で死去し、令和ならハリー王子とメーガンさんの王室離脱といった問題が起きたとき、皇室がどのような立ち位置でやり取りをするかが、その後の関係にも影響する。
「平成の皇室は、親しくしていた英国とは別の欧州の王室を通じて、世界の王室の動きや温度感などを確認するといった積み重ねを大切になさっていたと思います」(多賀さん)
令和の皇室が運んだ新しい風
そんな英国と日本との関係のなかで、浩宮さま(現・天皇陛下)のオックスフォード大学への留学は、皇位継承者として海外王室とのチャンネルの構築を期待されてのものだったと、平成の皇室を知る人物は、振り返る。
1982年8月、当時皇太子だった上皇さまは、記者会見の場で「浩宮さま」の海外留学について、こう明かしている。
「そういう経験を持っていれば、外国で同じような立場の人に接したときなど、よりよく自分の経験を通して話し合える。お互いを理解するのではないかというふうに思っています」
平成の両陛下の訪英から26年の歳月を経て、令和の両陛下は訪英し、新しい英国王、王妃と親しく交流を重ねた。
チャールズ国王は晩餐会のスピーチで、天皇陛下との40年にわたる友情について触れた。一緒にフライフィッシングをしたことを懐かしみ、英国でも人気のポケットモンスターのセリフ「全部ゲットだぜ!」(英語)などを引き合いにジョークを披露し、笑いを誘った。
そして、英国で若き日を過ごした経験を持つ陛下と雅子さまは、約1週間の滞在を、リラックスした表情で過ごされていた。
「ともに代替わりをした令和の皇室と英王室が運ぶ、新しい時代の風を感じました」
多賀さんは今回の訪英を、感慨を込めてそう振り返った。
(AERA dot.編集部・永井貴子)