松井氏は2003年から2009年までヤンキースでプレー。所属最終年となった2009年のWS(対フィリーズ)では6試合で打率.615(13打数8安打)、3本塁打、8打点という大舞台での強さを遺憾なく発揮してMVPに輝いた。メジャー1年目の4月8日、ツインズ戦で満塁本塁打を放って衝撃の本拠地デビューを飾ったが、WSのMVPはそれ以上のインパクトだったという声は多く、チームを世界一に導いたパフォーマンスは今でもファンの脳裏に焼き付いている。
「長い歴史と伝統を誇るヤンキースには素晴らしいOBがたくさんいる中で始球式に選ばれたということが大きな意味を持つ。もちろん世界一への縁起担ぎや日程などの諸条件が整ったというのもあっただろう。しかし、それ以上に純粋なリスペクトが感じられた」(MLBに詳しいフリージャーナリスト)
今シリーズ、ヤンキースの本拠地で開催された試合で始球式に登場したのは、第3戦が5度の世界一を経験した元主将のデレク・ジーター氏、そして第4戦は90年代に活躍して黄金時代を支えたポール・オニール氏。2人の背番号がともにヤンキースの永久欠番になっていることを考えても、いかにチームの歴史にとって重要な人物かわかるだろう。そして、彼らに続く第5戦で大役を任されたのが松井氏だった。
始球式に伝説的な球団OBを呼ぶのはドジャースも同じ。本拠地ドジャースタジアムで開催された第1戦は1981年のWS・MVPスティーブ・イェーガー氏と、1988年のWS・MVPオーレル・ハーシュハイザー氏。そして第2戦ではOBの元スター選手であるマット・ケンプ氏とアンドレ・イーシアー氏が務めた。
「WSの始球式は誰でも簡単にできるものではない。基本的にはホームチームのOBが務めるが、球団への貢献度が大きくモノを言う。『松井氏の55も将来の永久欠番か?』という声も冗談には聞こえないほど」(ヤンキース関係者)
「始球式に限って言えば、(日本よりも)米国の方が伝統や歴史に多大な敬意を払っている。スポンサーへの忖度が優先され芸能人が始球式を務めることも多い、日本シリーズとは重みに違いがある」(MLBに詳しいフリージャーナリスト)