※写真はイメージです(gettyimages)
この記事の写真をすべて見る

「あなたの職場では、音楽を聴くことが不真面目とされていませんか?」
そう語るのは、これまでに400以上の企業や自治体等で、働き方改革、組織変革の支援をしてきた沢渡あまねさん。その活動のなかで、「人が辞めていく職場」には共通する時代遅れな文化や慣習があり、それらを見直していくことで組織全体の体質を変える必要があると気づきました。
その方法をまとめたのが、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』です。社員、取引先、お客様、あらゆる人を遠ざける「時代遅れな文化」を変えるためにできる、抽象論ではない「具体策が満載」だと話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「音楽が禁止された職場」の問題点について指摘します。

音楽を聴いて仕事するのが不真面目とされる組織

 イヤホンをつけて好きな音楽を聴いて仕事したり、フロアに音楽を流したり。音楽を聴きながら仕事をすることができる職場がある。

 その一方で、「音楽を聴きながら仕事をするなんて不真面目だ」と言う人もいる。もちろんお客さんと接する職場においては、フロアのBGMはともかくとして個々がイヤホンで耳を塞(ふさ)いでいては何かと都合が悪い。異音を察知して危険を回避しなければならない現場では、音楽が雑音となり安全・安心を妨げるリスクにもなりうる。

「耳を塞がれていると話しかけにくい」など、コミュニケーションの阻害を指摘する声もあるだろう。

職場で音楽を聴く/流すメリット

 職場で音楽を聴いたり流したりすることについては、賛成、反対、いずれの意見にも合理性がある。聴覚にも個々の特性があり、音楽が流れていると仕事に集中できない人もいる。そのような人たちへの配慮も必要だ。

 その上で、ここでは音楽を聴きながら仕事をするメリットに注目したい。

 個人がイヤホンで聴く場合は個の尊重。フロアで音楽を流す場合においては全体の場創り、雰囲気創りなどの意義もある。

「音楽を聴きながらのほうがPC作業が捗(はかど)る」
「思考が行き詰まったとき、音楽を聴きながらお茶を飲むとリフレッシュできて新たな発想が浮かぶ」

 そんな声もある。

 工場でも音楽を流していることがある。曲に合わせてテンポよく作業を行うことができ、曲と作業のズレが発生することで生産の遅れやトラブルを皆が認識しやすくなる。異常発生時や、進捗遅れが生じているときにはアップテンポの曲を流し、危機感や緊迫感を高めている現場もある。

 このように、音楽には人の行動を促す効果もあるのだ。

シーンとした職場がもたらす体質

 とくに大きいのがコミュニケーションにおける効果だ。

 一切の物音がしない環境では、仕事で疑問があったときやトラブルが起きたとき、隣席の人に相談するのも憚られる。会話が周囲に筒抜けになってしまうからだ。

 最悪の場合、「そんなことも知らないのか」「何をやっているんだ」などと思われるのを恐れ、ミスを隠したり、独断的な行動をしたりする体質に変わっていく。話す際は別の場所や個室に移動するなど、おのずとクローズドなコミュニケーションが主体となっていく。当然、情報の共有もなされないだろう。望ましくないさまざまな体質を生み出していく。

 その点、BGMがあったほうが人々の気持ちは明るくなり、コミュニケーションが誘発されたり、リラックスして仕事に集中できたりするメリットがある。

次のページ