0.1%にも満たない
1日約3549億ドルから計算すると8カ月で1京292兆円に達する。1京円は1万兆円……意味がわからなくなるほどの巨額マネー。
それに比べ、前述した「新NISA8カ月間」の「円安圧力」は9兆6000億円。為替の海では0.1%にも満たない。
楽天経済研究所チーフエコノミストの愛宕伸康さんにも取材した。
「日本国内の低成長が続き、金利も低かったので、海外の金融商品にお金が流れているのは確かです。しかし新NISAを為替変動の要因として見ることには違和感があります。
円安の進行に新NISAの影響が『全くない』とは言えませんが、全体の流れを理解しないと見誤るでしょう」
愛宕さんによると、日本は「国内でモノをたくさん作って輸出で稼ぐ国」から「海外に資産をたくさん保有し、その利子で生きていく成熟した国」に変貌している。
「国の経常収支を見ても、モノの輸出入の収支である貿易収支はここ数年、赤字です。一方で海外の利子所得などの経常収支は赤字ではありません。
世界で稼ぐ国内企業も含め、日本は海外で儲けたお金を円転(外貨を円に替えること)させず、海外に置いたまま利益を得る国になっています」
為替介入15兆円
2024年4月から7月にかけて1ドル=150〜160円の円安となった。政府、日銀は円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。
財務省が毎月発表する月次データをチャート内に示したが、2024年4月、5月、6〜7月に3兆〜5兆円規模の為替介入を実施。介入総額は15兆3233億円に達した。
ただ、政府・日銀が15兆円を投入した結果はみなさんご承知の通りだ。8〜9月以降、1ドル=140円台になったが、主な要因は日銀が政策金利を7月末に0.25%に引き上げたことと、米国の景気後退懸念による利下げ観測が高まったことのほうが大きい。
15兆円を超える実弾介入でも一瞬しか動かなかった米ドル/円の為替レートが、新NISAの外貨建て投資による8カ月で9兆6000億円の「円安圧力」だけで、そうやすやすと動くものだろうか。
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