一方で、部分連合では与野党の歩み寄りが進まず、国会審議が混乱するという展開も予想される。野党が多数を占める衆院で内閣不信任案が提出されれば、可決される公算が大きい。その場合、石破首相は総辞職か衆院の解散・総選挙を選択しなければならない。総辞職なら、自民党は新総裁を選んで出直さなければならない。解散・総選挙なら与野党を巻き込んで混迷がいっそう深まる。
自公の少数与党政権では、自民党内の造反が大きな意味を持つ。首相指名でも、自民党内から石破氏ではなく、高市早苗前経済安保相の名を書いたり、棄権したりする議員が出れば、野田氏が多数を占める可能性もある。石破政権が続く場合でも、内閣不信任案の採決で自民党内から賛成票が出れば可決の可能性が高まってくる。
通常国会で攻防激化
今後の政治日程を考えてみよう。特別国会での首相指名・組閣を受けて、災害対策や物価高対策を盛り込んだ補正予算案の編成と来年度の当初予算案の編成作業が進む。年明けの通常国会では、政治改革や経済政策をめぐって与野党の攻防が激化する。野党から内閣不信任案が提出されれば、与野党の対決が熱を帯びる。通常国会後には参院選が待ち受けている。立憲などは参院選で与野党の逆転を実現したい考えだ。そうなれば、自公政権は行き詰まり、参院選を契機とする政権交代につながる可能性も出てくる。
「永田町の攻防」をよそに日本を取り巻く国際情勢は厳しさを増し、経済情勢も大きく変化している。東アジアでは、中国の軍事的台頭を受けて台湾周辺の緊張が高まる。北朝鮮軍のウクライナ戦争への「派兵」によって、北朝鮮とロシアの関係が強化され、韓国と北朝鮮との緊張も高まってくる。日本国内では物価高への不満が募り、中長期的には少子高齢化や財政赤字の解決策が見えてこない。総選挙で示された民意を受けて政治がどんな打開策を見いだしていくのか。模索は始まったばかりだ。(政治ジャーナリスト・星浩)
※AERA 2024年11月11日号