会見で記者の質問に答える立憲民主党の野田佳彦代表=10月28日午前1時39分、東京・永田町の党本部

政局 三つのシナリオ

 今後の政局はどう動くか。三つのシナリオが考えられる。

 第一に自公だけでは足りない「数」を補うために、7議席から28議席に増やした国民民主党と、44議席から38議席に減らした日本維新の会を連立に引き込むことだ。どちらかが連立与党に加われば、過半数を上回り、政権運営は安定する。

 ただ、実際には簡単ではない。国民民主党には、一部の政策で歩み寄ることができれば自公政権に協力すべきだという考えがある。その一方で、同党を支援している民間労組の多くは、来年の参院選を見据えて立憲民主党との連携を優先すべきだという意見が強く、国民民主党全体で連立与党に加わるのは容易ではない。玉木雄一郎代表は、首相指名では1回目でも決選投票でも「玉木雄一郎と書く」と明言。当面は自公連立に加わる考えはないという。

 維新はこの総選挙で牙城の大阪などで自民、公明両党と全面対決。そうした経緯もあり、「すぐに自公と融和できる状況にない」(幹部)という意見が多数派だ。政策面でも、政治とカネをめぐる姿勢では自民党と維新と考え方の違いが大きい。

野党連携にはハードル

 第二のシナリオは、98議席から148議席に増やした立憲が野党をまとめて政権交代を実現することだ。石破自民党にとっては、最も避けたい展開だ。立憲の野田佳彦代表は「特別国会の首相指名で首相を取りに行く」と息巻く。まず、かつての民主党や民進党で一緒だった国民民主党に協力を要請。基本政策の合意などをめざす。さらに維新に対しても、首相指名で野田氏に投票するよう呼びかけた。だが、国民民主党と維新は、いずれも立憲とは原発政策や安全保障政策で相いれないとしており、連携のハードルは高い。

 第三のシナリオは、自公が少数与党のまま、野党とは個別に対応するという流れだ。政権運営は不安定で、さまざまなリスクが伴う。これまでの政策決定は、自民党が政務調査会を中心に関係省庁とすりあわせを進めて予算案や法案をまとめ、公明党との与党協議を経て実質的に決めてきた。閣議決定して国会に提出した後は、野党の質問を受けるものの、最終的には与党の多数で押し切ってきた。だが、少数与党ではそうした手法が通じなくなる。

 ただ、少数与党の状況を活用する方法はある。これまで自民党内で続けられてきた政策づくりを与野党でオープンに進める。例えば国民民主党が主張する103万円の壁(アルバイトなどの年収が103万円を超えると、親の扶養家族から外れて、親の税負担が増える制度)の解消問題。自公と国民民主党との協議を通じて103万円を引き上げ、多くの勤労者の手取りが増えることになれば国民民主党の「成果」となる。自民党の森山裕幹事長は、こうした野党との政策協議を積み重ねていく「部分連合」を進めようとしている。

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