ミュージカル「DREAM BOYS」で、1階客席通路に降り立ったショウタ(渡辺翔太)が、戦わねばならない苦悩と負けられない思いとがないまぜになった表情で魅せる(写真:岡田晃奈)
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 2004年の初演以来、大切に継がれてきた、夢見る少年たちのかけがえのない友情を描くミュージカル「DREAM BOYS」。昨年に続き、渡辺翔太を主演に、ライバル役に森本慎太郎を迎え、現在の帝国劇場での最後の公演となる舞台がより深化して幕を開けた。AERA2024年11月4日号より。

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「勝ち負けなんてどうでもいい。もう一度グローブを交えて、壊れた俺たちの絆が、」

 強い意志をにじませ、そう語るショウタが、一瞬の間を置き、「……元に戻れば」と、とてつもなくやさしい声を響かせた。

 ミュージカル「DREAM BOYS」が、昨年に続き、渡辺翔太を主演に、ライバルのチャンプ役に森本慎太郎を迎えて、10月9日、東京・帝国劇場で開幕した。基本的な物語や演出は変わらない。セリフそのものに感じる変化もほんのわずかだ。だが、それぞれが抱える苦しみ以上に、より誰かを思う気持ちが伝わってきた。それゆえに、互いの思いのすれ違いによってもつれた絆も浮き彫りになった。

 例えば、ショウタの弟分コウキ(川崎皇輝)が、なぜボクシングの夢を諦めたのかと尋ねる場面。「もっと大事な夢ができたから、かな。俺、大金持ちになりたいんだ」。やや嘯(うそぶ)くような響きがあった昨年に比して、そう答える渡辺の声と表情はひどくやわらかくやさしく、何か理由があるのではと想像させる。

 一方、シンタロウがショウタに向けた「元ボクサーがこんなことやってて恥ずかしくないのか?」というセリフは、昨年より穏やかながら感情の内包を感じさせ、そのぶん直後の「金のためならなんでもやるのかよ!」という強い叫びからシンタロウの怒りの爆発が伝わってきた。

 2人とも昨年からドラマ出演を重ねてきたこともあるのだろう、言葉ののせかた、緩急と間、そして何よりも表情で、目と心を奪いにくる。歌は声そのものの美しさも感情表現もさらに深みを増し、肉体面でも進化。より美しくなったフライングで魅せ、ボクシンググローブをかまえ殴り合う姿はぐっと説得力が増していた。

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