選挙を仕切る自民党選対幹部も、「6割方、会期末までに解散するだろう」と言う。「までに」という言葉から、サミット開催直後の解散も視野に入っているようだ。既に、自民党は元宿事務総長名で全国都道府県連に情勢分析のレポートを出すよう通達を出した。

 そんな岸田自民のイケイケぶりについて、政治ジャーナリストの野上忠興氏は次のように語る。

「確かに、増税論議の後になる来年の解散は難しいでしょう。増税をやって勝った政権はないですから。年末にかかるほど、国民は『増税は嫌だ』という感情を抱きます。ただ、だからといって早期解散で本当に勝てるのか。支持率が上がったといっても、各社の世論調査では『他の内閣より良さそうだから』といった消極的な理由が多いので、まだわかりません。統一地方選の結果を待って、最終判断するのではないか」

 3月29日の国会審議で、岸田首相は解散について「考えていない」と述べ、防衛力の強化や子ども・子育て政策などの課題に優先的に取り組む考えを強調はした。しかし、自信を回復した岸田首相の胸中は、解散カードを切りたくてしょうがないものとみられる。

 一方で、何らかの理由で解散を先送りせざるを得なくなった場合の絵図も描いているようだ。

 今から2カ月ほど前の2月6日夜、岸田首相は萩生田光一党政調会長と、保守派の論客でジャーナリストの桜井よしこ氏の3人で東京・西麻布の日本料理店「ときわ」で3時間以上にわたって会食した。3人の組み合わせの異例さが際立ったが、その際に話し合ったとされる岸田首相が思い描く長期政権への極秘戦略が漏れ伝わってきた。

「ずばり、憲法改正の発議です。政権を延命する策として急浮上しています」(前出の政府関係者)

■宏池会理念へのこだわりは弱い

 国の行く末を左右する改憲発議がなぜ、政権延命につながるのかには解説が必要だろう。

 岸田政権が「改憲第1弾」として想定しているのは、「緊急事態時における国会議員の任期延長」。憲法審査会での審査を経て衆参両院の本会議に付され、総議員の3分の2以上の賛成を得れば、国会が憲法改正を発議して国民投票が行われる。公明党幹部は、「改正原案が提出されても、そこから国会をふたまたぎする協議時間が必要だろう」と語る。

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