
評価は分かれるだろうが、最近はウクライナの首都キーウへの電撃訪問、日韓関係の改善、日銀人事などで、岸田首相が積極策に出ていることは確か。打つ手打つ手がうまくはまっているという手ごたえで、「俺は選挙では負けない」と語っているという。
岸田政権の「好調」の理由として、ある自民党三役経験者は「主流派体制の再構築が奏功した」と説明する。「合理的だが面倒見が悪い」と指摘される茂木幹事長を意思決定の中心から遠ざけ、代わりに二階元幹事長らと近い森山選対委員長を重用。政権運営を「岸田・麻生・森山ライン」にシフトさせたというのだ。
「茂木氏は党運営で独走が目立ち、『ポスト岸田』への意欲も隠さない。首相は不信感を強め警戒している。一方の森山氏は実直で信頼が置け、首相と距離がある菅前首相や二階元幹事長とも近く目配せもできる」(党三役経験者)
順当にいけば秋に党役員人事が想定されるが、森山氏は早くも茂木氏の後任幹事長の一番手に名前が挙がっているという。
■側近を遠ざけて「霞が関ライン」
官邸も同様の変化が見られる。首相はこれまで、側近の木原誠二官房副長官を重用してきた。だが、木原氏は党や国会に十分な根回しをしないまま先走ることが多く、不必要な摩擦を生んできた。
そこで首相は、「安全保障や外交など最重要案件から木原氏を外すことにした」(政府関係者)という。代わりに、元経済産業事務次官の嶋田隆首相政務秘書官、秋葉剛男国家安全保障局長、財務省出身の藤井健志官房副長官補の「霞が関ライン」を一転して重視するようになった。
党と官邸の体制の立て直しにより「党運営や政策の発信が徐々に安定してきた」(同)というわけだ。
「5月19~21日に地元・広島で開催されるG7サミットでは、バイデン米大統領の平和記念資料館訪問などさまざまな『見せ場』をつくって、さらなる支持率アップにつなげる。ほかにもあれこれ『バラマキ』をしたうえでの解散を想定しているようだ」(岸田首相周辺)