死んだおじいちゃんが遺したノート。そこには、死んだあとの予定や、神様へのリクエスト、天国の予想図などが書かれていた……。ヨシタケシンスケの絵本『このあと どうしちゃおう』である。
 エンディングノートといえば、終末医療や葬儀についての希望、遺産相続についての指示など、とかく堅いものになりがちだ。でもこのおじいちゃんのノートは愉快。「てんごくにいくときのかっこう」や「うまれかわったらなりたいもの」など、死んだあとの夢が語られている。「いじわるなアイツはきっとこんなじごくにいく」には大笑いしてしまう。地獄の制服はチクチクして着心地が悪く、靴はきつくていつも小石が入っているらしい。
 ノートを読んだ「ぼく」は考える。おじいちゃんは死ぬのが楽しみだったのか? もしかしたら逆で、ほんとうは寂しくて、怖かったのかもしれない。そして、自分もノートを買って、書きはじめる。
 この絵本のテーマは死。センチメンタルでも荘厳でもなく、ごく普通の日常の延長で考えている。本に挟み込んだパンフレットに、著者のインタビューがある。
「死は茶化しちゃいけないっていうムードがあるけど、世の中ふざけながらじゃないと話しあえないこともたくさんある」とヨシタケはいう。
 本書は『りんごかもしれない』『ぼくのニセモノをつくるには』につづく、「発想えほん」の第3弾だ。
 見慣れた風景も、ほんの少し角度を変えたり、別の要素を加えることで、まるで違ったものに見えてくる。子どもだけでなく、大人、それも老人におすすめしたい絵本だ。

週刊朝日 2016年6月10日号