「きっかけはコロナ禍でした。もともとオープン当時から春樹部屋を作りたかったのですが、お客さんがぜんぜん来なくなったことで今がチャンスだと」
本は現在400冊ほど。高校生で読み始めて以来、日本で手に入る村上さんの本はすべて持っていたという荒木さんの本に加え、青森県の人からの240冊の寄贈分や、そして外国で翻訳された本もある。
「『村上春樹翻訳本キャンペーン』として、海外の翻訳本でまだ春樹部屋にない本を1冊寄贈してくれたら1泊無料にしています。今も増え続けています」
キャンペーンで宿泊した外国人客とたどたどしい英語で「春樹トーク」を交わすことも。村上春樹は国境を超える、と実感することも多いという。
「村上春樹が好きな人は、好きであることを誰かと話すことを求めていると思うんです。でも、読書会に出ていくのも抵抗がある。本が好きな人は基本、恥ずかしがり屋なので(笑)。そういう控えめな人ができる控えめな交流が『聖地巡り』なのかなという気がします。そこで同じ思いの人と話せたり、その地に行くことで作品と会話をしているような思いになれたり。いるかホステルは聖地にはまだ早いですが、そんな場所になれたらうれしいなと思います」
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2023年4月17日号より抜粋