「徹底したどぶ板選挙が功を奏し、地元では『西村さんは鼻持ちならない印象だったけど、ちゃんと反省するんだね』などと受け入れられているようです。汚名返上で8期連続当選の可能性は十分にあります」

 野上氏は当初こう話していたが、10月9日、西村氏が裏金問題への関与により自民党の公認を得られず、無所属で出馬すると報じられると、当落評価を〇から▲に変更した。

「地元からすれば、すっかり威信が地に落ちて先が見えている人に、わざわざ票を入れないでしょう。一部の熱心な自民党支持者は応援してくれても、ある程度の票が維新に流れるかもしれない」

 さらに角谷氏は、「前明石市長の泉房穂氏が、立憲候補である橋本慧悟氏の応援に回れば、橋本氏が勝つ可能性は十分ある」と分析する。

世耕氏に「脱法的行為です」と憤る県連

 和歌山2区は、保守分裂選挙の様相を呈している。“自民党のドン”こと二階俊博氏が絶対的な力を誇る“二階王国”では今回、二階氏の後継者として三男・伸康氏が自民党の公認を得て出馬する。その対抗馬として名乗りを上げたのが、自民党派閥の裏金事件をめぐる離党勧告処分を受け、党を去った前参院幹事長の世耕弘成氏だ。

 無所属でのくら替え出馬という世耕氏の暴挙に、自民党和歌山県連の中村裕一幹事長は「当選したら復党するなどということは、党規をないがしろにする脱法的行為です」と厳しく批判する「談話」を発表。自民関係者の大反発を招いているが、野上氏によると、勝機があるのは世耕氏のほうだという。

「二階氏の体調不良が相次いで報じられ、地元での影響力は落ちてきている。二階離れが進む中、選挙区調整によって区割りも変わり、世耕氏は『今なら勝てる』と読んだのでしょう」

 角谷氏も「二階氏は県連における実権を握ってはいるものの、息子の伸康氏のために選挙戦で動き回れるような状態ではない」と、世耕氏優勢の評価だ。

 さらに世耕氏が伸康氏を下して当選したあかつきには、世耕氏は再び自民党に迎え入れられる可能性すらあるという。

「議席を少しでも上積みするため、世耕氏を自民党議員として公認する道を選ぶかもしれない。なんといっても、“最後は何でもあり”の自民党ですから」(角谷氏)  

(AERA dot.編集部・上田耕司、大谷百合絵)

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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