2000年に規制法が成立、今や日常語となった「ストーカー」。問題と闘うためにこそ「加害者を知らねば」と、ドキュメンタリー番組のディレクターがかれらと直接対峙したルポだ。
 加害者カウンセリングに訪れる、男女3名のインタビューが克明に紹介される。30代のある女性は好きな芸術家を「先生」と呼び、ツイッターやメールで頻繁に連絡を繰り返す。受信拒否されても「どうにかして繋がりを保ちたい」と連絡量は増えたという。外見や仕事上問題がなくとも、ひとたび恋愛感情を抱くと相手の気持ちをまったく想像できない。「追う」ことが生活のすべてとなるその姿は「依存症」と著者は言う。SNS上での匿名の個人攻撃が問題となる現在、その「症状」は誰にでも起こりうるとリアリティーを感じずにいられない。

週刊朝日 2016年6月3日号