磯村:僕も日本国内だけで作品をまわすのではなく、海外に出していかないと産業として衰退していくと思っています。多国籍なスタッフや俳優、プロダクションと作品作りをし、映画文化を交流・交換していくことはこれからどんどん増えていくと思うし、積極的にやったほうがいいと考えています。
感じたものをそのまま
──内山監督、磯村さん、岸井さんはともに1992年生まれ。同世代として社会への思いや感覚の共有はあったのだろうか?
内山:誤解を恐れずにいうと、「若さ」や世代みたいなものに括られることを望んでいるわけではありません。そういった視点が時にジェネレーションギャップを生み、格差や溝を助長してしまうのではないかと思います。
磯村:世代などは関係なく、たぶん「人」だと思うんですよね。何歳であっても合う人とは合うし、世代に関係なく一緒に歩むことはできる。
岸井:私もそう思います。特に今回は本作に対する全員の熱量をすごく感じました。本作では本番前のテストがなかったんです。「このセリフのあとこの立ち位置に行かなきゃいけないな」とか余計なことを考えずに、感じたものをそのまま出せることがありがたかった。みんなで共有できた勢い、みたいなものがあったからかもしれません。
磯村:ただ、内山監督とは食事に行ったときに「いま自分たちがこの世の中をどう捉えているか」みたいな話はちょっとしましたね。
──磯村さんは近年、実事件をもとにした映画「月」(石井裕也監督)や、他者に理解されにくい欲望を描いた「正欲」(岸善幸監督)など現代社会を映す作品に意欲的に出演している。
映画のフィルター通し
磯村:人によりけりなのかもしれないですけど、いま日本が抱えている問題や人々の苦しい思いを役者は自分からはなかなか発信できないんです。声を上げるためには、やはり映画やドラマや舞台などエンターテインメントのフィルターを通すことが必要で、そこで問題を知ったり気づいてもらったり、何かのきっかけを作ることができればいいなと僕は思っています。だからなるべくそういった問題提起をする作品に参加しているし、それによって自分自身が学ぶこともあります。よりいろんな層の人たちに映画が届くことができれば、観てくれた人たちが何か一つ声を上げるきっかけになるかもしれない。それが映画の力だと思っています。