【「走るレストラン」は景色もご馳走】おれんじ食堂 新八代~川内/肥薩おれんじ鉄道が運行(写真:肥薩おれんじ鉄道提供)
九州西海岸を走り、魅力的な車窓区間が近づくと、列車は徐行しアテンダントのガイドが流れる(写真:肥薩おれんじ鉄道提供)

 松本さんのおススメの観光列車は、南海電鉄の「天空」。世界遺産の高野山麓、橋本(和歌山県橋本市)~極楽橋(同高野町)間、約20キロを走る。

 標高差443メートルの山岳区間を、ゆっくり駆け上がる。始発から五つ目の高野下(こうやした)駅(同九度山町)を出ると、最小半径100メートルという急カーブを地形にならって右へ左へ、レールと車輪がきしむ音を響かせながら、急勾配の山間を力強く走る。

「谷も深く、途中の中古沢橋梁は川面からの高さが30メートル。この辺りからトンネルも多く、こんな地形によくぞ鉄道を敷いたものだと驚かされます」

走るレストラン

 そして、観光列車の楽しみは、鉄道や実際に車内で乗客と触れ合うスタッフのホスピタリティーによって演出されるという。

「工夫を凝らした現在の観光列車は『動くテーマパーク』ともいえます」

「おれんじ食堂」もそんな観光列車の一つだと松本さん。一風変わった列車名だが、八代(本県八代市)~川内(せんだい、鹿児島県薩摩川内市)間を結ぶ第三セクターの「肥薩おれんじ鉄道」が13年から運行。風光明媚な九州西海岸の景色を眺めながら料理を楽しむことができる「走るレストラン」だ。

 松本さんは、おれんじ食堂のサービス内容は年を重ねながら変化してきたが、「おれんじ食堂」という列車は、単に肥薩おれんじ鉄道が運行しているのではないという。沿線の人々や企業の心を束ね、その思いを乗客に届けるべく存在している、と。

「人々の思いに触れ、車窓を眺めながら楽しむ食事。いつ乗っても、そんな幸福感に満たされます」

(編集部・野村昌二)

AERA 2024年10月14日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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