車窓の景色を楽しみながら、列車の旅をもっと楽しむ──。そんな「観光列車」に魅せられる人も少なくない。鉄道をこよなく愛する「鉄ちゃん」たちにおススメを聞いた。AERA 2024年10月14日号より。
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この秋、JR西日本は新しい列車を運行させた。
その名は「はなあかり」。
特急「はまかぜ」などに使用されるキハ189系を改造し、外観を「檳榔子(びんろうじ)染」と呼ばれる黒褐色をベースに、金色のツタをデザイン。内装は、四季の草花をモチーフに超豪華に仕上げた観光列車だ。
3両編成で、定員はわずか54人。運行ルートは期間によって変わり、年内は日本海沿いの敦賀(福井県敦賀市)~城崎温泉(兵庫県豊岡市)間を、5時間かけゆったりと走る。
「女子鉄アナウンサー」として活躍するフリーアナウンサーの久野知美さんが、おススメの観光列車に挙げたのは、JR九州が4月に運行を始めた「かんぱち・いちろく」だ。博多(福岡県福岡市)~別府(大分県別府市)間を、約5時間かけて走る。
乗ること自体が「観光」
3両編成で、大きな窓には、雄大な九州の山や川や森や田園風景が流れる。中でも久野さんが「すごくいい」と絶賛するのが、2号車の共用スペースのラウンジ。そこには樹齢約250年の杉を使った、長さ約8メートルの一枚板のカウンターがある。そこで立ち飲みバーのように美味しい食べものやお酒を飲みながら、お客同士のコミュニケーションも生まれるという。
「この共有部分を大いに生かし旅の思い出をつくってくださいという、鉄道会社の思いが伝わり、それが素敵です」
走行中は、SL(蒸気機関車)を格納する機関庫があることで知られる豊後森駅(同玖珠町)や、2段になって流れる慈恩の滝など観光スポットに近づくと、車内アナウンスで教えてくれる。途中には“おもてなし駅”が設けられて地元のお土産が売られ、沿線地域の人たちによるおもてなしも受けることができる。