K-PRO所属芸人の若手を「牧場芸人」と呼ぶ。放牧された牛のように伸び伸び育ってほしいとの願いからだ。ネタ見せ勉強会には必ず立ち会い、彼らの個性、持ちネタなどを尊重しつつ、アドバイスを送る(写真/小山幸佑)

複数の作業を同時進行 「聖徳太子」と囁かれる

 児島がK-PROを立ち上げた2004年、お笑いと言えば大阪を本拠地とする吉本興業に所属する芸人たちの独壇場だった。吉本は大阪や東京だけでなく地方都市にも劇場を持ち、所属芸人たちはそこでライブに出演しながら腕を磨く。

 一方、東京のお笑いライブと言えば、芸人が所属する事務所が開催はしていたが数は少なく、コント赤信号・渡辺正行が主催するコント大会や、高田文夫による定期ライブなどがあるものの、若手芸人の多くはこれらの舞台にも立つことができず、吉本に所属していない芸人が実践の場で笑いを磨くことが難しかった。そこにK-PROができたことで、吉本所属以外の若手芸人も舞台に立てるようになったのだ。

 今やK-PROライブで腕を磨いた芸人をテレビで見ない日はない。漫才日本一を決める「M-1グランプリ」で21年に優勝の錦鯉、22年優勝のウエストランド、また23年に優勝した令和ロマンは学生時代に違うコンビでK-PROの舞台で研鑽(けんさん)している。コント日本一を決める「キングオブコント」で優勝した東京03、バイきんぐ、ハナコなどもK-PROの舞台出身者だ。

 ウエストランドの井口浩之(41)は言う。

「呼ばれてないのに、勝手に舞台に上がって、児島さんに怒られてましたよ。K-PROは東京のお笑いシーンをめちゃくちゃ変えたんじゃないですか。僕らがM-1で優勝したことで、今までは夢のまた夢の感覚だったのが、他のやつらも優勝できるんだという感じになっていると思います。その点では、僕らも少しはいい影響を与えられてる気がしますね」

 ほぼ1日に3回、ライブを開催する児島は超多忙だ。その回ごとに出演する芸人らと打ち合わせし、楽屋で緊張しているコンビを見つけては笑わせ、初対面の芸人たちには共通の話題を振り和ませる。そうかと思えば会場に出て照明、音響スタッフに指示を出し、客の誘導にも姿を見せる。全てのライブが終了し深夜に事務所に戻ると、テレビを見ながらパソコンで作業し、ユーチューブを横目で見つつ当日のライブ動画をチェックするなど、同時にいくつもの作業をこなす。周りからは「聖徳太子」と囁(ささや)かれることも。睡眠時間はほぼ1時間。それを隙間時間に6回取る。

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初めてのライブ手伝いで 芸人に態度を怒られる