児島は常に「芸人ファースト」。デビュー間もない若手から売れっ子芸人まで、エネルギーのかけ方は同じ(写真/小山幸佑)
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 K-PRO代表、児島気奈。子どもの頃から、お茶の間でお笑いを家族で見るのが日課だった。家族が笑顔になるお笑いが大好きだった。その気持ちは大人になっても変わらず。いや、お笑いへの愛はずっと深くなった。いつしか見る人から、企画をする人へ。お笑いライブ制作会社を立ち上げ、東京のお笑いシーンを変えたとも言われる。でも、ただただお笑いが好きなだけなのだ。

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世間はお盆休みの真っ最中。東京・西新宿のオフィス街はひっそりしていたが、とある雑居ビルの地下1階には炎天下の外気温をさらに上昇させるような熱気が充満していた。20人も入れば満杯になるような小さな劇場で、芸人デビュー1年目の「人生棒に振ろう」「かたすみ天国」「風速マルチーズ」「黄金伝説」「パニ丸」の5組が、これから始まる舞台のために必死にネタ合わせをしていた。喋(しゃべ)りが空回りするコンビもいれば、ネタが噛(か)み合わないトリオもいる。それでも「笑いを取りたい」「有名になりたい」という熱が全員から放出されていた。

 彼らを舞台袖からじっと見ていた全身黒ずくめの女性が声をかける。「滑ってもいいからね。思い切ってやりなさい!」と声をかけたかと思えば、また他の組には「もう一歩、前に出て! 声も小さいよ」と穏やかにアドバイス。

 K-PRO代表の児島気奈(こじまきな・42)だった。児島が率いるお笑いライブ制作会社「K-PRO」は、このような小規模ライブから人気芸人が出演する大掛かりなものまで、年間1300本ほどのライブを主催している。ライブは100種類近くあり、デビュー年数で分けるものもあれば、コンビの特徴やネタの質、芸人のキャラクターなどを考慮し、それぞれが同じ舞台で刺激し合いさらに成長を促すライブもある。ネタにマンネリが見えるベテランには敢(あ)えて若手と同じ舞台に立たせることも。また、実力が付いた中堅には、普段のコンビとは別の組み合わせでネタを披露するユニットライブを企画する。どのライブも児島ならではのアイデアだが、多くの芸人たちの特質や現状を熟知していなければできない組み合わせだ。

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