著書「中森明菜の音楽1982-1991」(辰巳出版)を執筆するにあたって、中森明菜の全曲を聞きなおしたという鈴木氏は、「水に挿した花」を初期の中森明菜の「名曲」と言い切る。
鈴木氏は、歌謡曲、ロック、フォークといったジャンルに分類できない「純粋音楽」と名付け、「大衆音楽」の対義語として「ただただ音楽としてピュアに美しい曲」と評価している。そんな「水に挿した花」を歌う中森明菜の姿は感動的だったと、スージー鈴木氏は言う。
「91年の幕張のライブは、89年に自殺未遂事件があり、同年12月31日に記者会見を開いたのち、ファンの前での復活のコンサートという位置づけです。『水に挿した花』をアンコールで歌うのですが、そのときに感極まる中森明菜は素晴らしく、そして美しい」
「かつて愛された日を もう一度とり戻せるわ」と歌い終えた中森明菜は、感極まったように涙を流す。
しおれそうな花の花瓶に“孤独”で水挿すことを忘れていた、という歌詞があり、鈴木氏は、
「純粋音楽家としての中森明菜の感性という花に、十分に水が挿され、あふれ出たのがこのときの涙ではなかったか」
と感じとる。
そして、これから復活する中森明菜の宣言とも受け取れ、その気持ちを応援するファンの声と一体化して、このライブでの「水に挿した花」は、より感動的なものになったという。
新たな歌詞に中森明菜の意志が
「水に挿した花」に続いて、アンコールのラストの曲は90年にリリースした『二人静 -「天河伝説殺人事件」より』のカップリング曲「忘れて…」だ。
〈今日はこれでさよならだけど あとひとつだけ 聞いてほしい〉から始まる歌詞が新たに付け加えられ、ライブで披露された。
「水に挿した花」で感極まって涙したあとの「忘れて…」の特別な歌詞に、鈴木氏は中森明菜の思いを読み取る。
「原曲にない新しい歌詞が入っていて、『色々あったけれども、ファンの前で歌うことが楽しい、これからもファンと共に歩んでいきます』というピュアな宣言です。『水に挿した花』も含め、この2曲は見どころだと思います」