この貴重なライブをリアルで見たファンも多いはずだが、鈴木氏は「ざっくりと語られる中森明菜像にはない、中森明菜」が見られるライブとしても見てもらいたいと話す。
「中森明菜は、『少女A』に代表されるようなツッパリ路線のころ、『DESIRE -情熱-』『ミ・アモーレ〔Meu amor é・・・〕』の日本レコード大賞授賞の曲の時代、89年の自殺未遂に特化したかたちで、ざっくりと語られている。
中森明菜には、もっと深みがあり幅広さがあるのに、多く語られていないと感じます。『水に挿した花』と、『忘れて…』に加えられた新しい歌詞は、中森明菜の語られ方に足りないものを全部表現しているといえます。
また私は、中森明菜を、それぞれの曲の世界を完璧に演じ切る『憑依型シンガー』だと表現していますが、そのため内面が見えてこないと感じるときもある。あまりにも完璧な憑依だから。
しかし、コンサートで見せる自然な言動とか笑顔とか、なんといってもこの幕張におけるアンコールの2曲は“素”の中森明菜を垣間見える貴重な瞬間だと思います」
まさに「伝説のコンサート」といわれるゆえんがそこにあり、再びその舞台に中森明菜が戻ることを期待してしまう。
(AERA dot.編集部・太田裕子)