「出るったって、フタはしっかり閉まってるんだぜ! 一体どうやって?」
「ここに居てもしかたない。誰かフタを開けてくれるような人間を探すんだよ!!」
「そんな奇特な人、どこにいるんだよ!?」
「だから探すんだよ!」
「だからどうやって!?」
「飛ぶんだよ! みんなで一斉に羽ばたいて、この虫籠ごと空を飛ぶんだよ! そしてフタを開けてくれる、そんな素敵な人間を探しに行こうっ!!」
「そんなバカな……できるわけない」
「やってみなきゃわかんねぇだろっ!! じゃぁ、いくぞ! ひの! ふの! みっ!!」
バタバタっ!!とやるとギジギジの塊が、宙に浮いたのです。なるほど、だから虫籠は姿を消したのです………たぶん、ね。
今でもあの虫籠が宙を舞いながら「ギジギジギジギジ」と虫の声を発しているのでは……と秋の夜空を見上げることがあります。
目の前に落ちてきたらどうしよう。何十年越しに虫籠のフタを開ける私を、彼らは許してくれるでしょうか? その前に私にはそんな資格があるのでしょうか?
あの虫籠、はるか彼方まで飛んでいって、親切なポリネシアンダンサーに拾われるといいな。
「ワオ! ナンダコレ? ナンカ『ギジギジ』イッテンナ。ナンカ、キモイナ、コレ……オイ、ステテコイッ!」