「ぷ〜〜〜〜ん」という高音がちゃんと出るようにね。ぶっつけでやるとバリトンのなんかセクシーな「ぷ〜〜〜〜ん」になるのでよろしくない。ハイトーンソプラノな「ぷ〜〜〜〜ん」は口の天井と鼻の奥あたりから音を出し、ビブラートを利かせるようにやると案外それらしく聞こえます。楽屋で調子よくあの「ぷ〜〜〜〜ん」が出ると、それを脇で聞いていた前座さんが自分の耳元を手で払ったりなんかして。まぁ演技でしょうが、なんとなくノセられて高座へ出られます。
よく「蚊の鳴くような声」と言いますが、たしかにあんな声で耳元で鳴かれると蚊には悪いけど問答無用で追っ払いたくもなります。もし「蚊の鳴くような声」が布施明さんのようなよく通る、ビブラートバリバリのハイバリトンなセクシーボイスだったら嫌がられることもないのでしょう。
「ようこそ、ムッシュー。私のありふれたA型でよろしければお好きなだけ吸ってくださいませ」と受け入れてしまうかもしれないな……時折そんなことを思いながら「麻のれん」を演っています。
昔、実家の近所の雑木林でゴマダラカミキリムシが大量発生したことがありました。あれは小学生の時か。立派な触角に小ぶりな黒いボディに特徴的な白いマダラ模様。口は糸切りハサミの先端のように鋭く尖っていて、なかなか少年の心を揺さぶるルックスです。ゴマダラカミキリムシにはダンディズムがある! そう思いませんか?
「ゴマダラがいっぱいいるぞー!」と友だちに声をかけると三、四人が集まりました。ちなみにカミキリムシの幼虫は木の幹の中に棲んでいて、一説には、幹ごと火をつけると幼虫が中で破裂し、その音が「パンパン!!」と銃声のように聞こえるので「テッポウムシ」とも呼ばれるそうです。なんとも物騒な虫の声です。
私たちは暇にまかせてそれにかまれないように虫籠に集められるだけ集めてみました。かまれたら出血確実です。10分もするとゴマダラカミキリムシでパンパンの虫籠。