kebiyamaさん @kebiyama:ガス器具を見て、同じスタジオで撮影しているとわかることも多い。サザエさんの観察も趣味で、給湯器が登場するか毎週チェックしている(写真:SNSから)

 人並み外れた知識量で、SNSの世界に小さな驚きを届けてくれる人もいる。「kebiyama」さんはコンロや給湯器などのガス器具観察を趣味にする。テレビCMやドラマ、アニメなどに一瞬映り込んだガス器具を「特定」し、Xに投稿していた。

〈サッポロ一番ずっと好きだったんだぜ。仲間由紀恵さん しょうゆ味篇にてリンナイ製ドロップインコンロRD640STSを確認。CM系頻出のコンロ、点火しているのでガスもつながってます。〉

〈さまぁ~ずチャンネル【さまぁ~ず初めてのラーメン!山頭火】激うまラーメンに大興奮!大巨人OPあり!にてノーリツ製FE式給湯器を確認。〉

 ガスを扱う仕事をしており、コンロや給湯器にもなじみが深い。投稿を始めたきっかけはドラマに映った湯沸かし器に違和感を覚えたことだった。

「何げなく見ていたら、湯沸かし器がガス管につながっていなかった。『これじゃお湯が出ないぞ? スタジオなのかな。よくあることなんだろうか』と疑問に思って、それ以来観察するようになりました」

ガス器具から生活推測

 住宅設備の一つであるガス器具を通して、アニメやドラマの背景を想像できるのがおもしろいのだという。

「『通話機能付きの浴室リモコンがついている。いい給湯器を選んだお家だな』とか、『浴室にバランス釜がついているから団地に住んでるのかな』とか、ガス器具からバックグラウンドを推測しながら物語を見ています。ドラマで豪邸が映った際、最高グレードのビルトインコンロが付いているのを発見したときは、『ヨシ! わかってるな!』と勝手にうなずいていました」

 その観察眼と目の付け所には、時に出演者からもリプライが舞い込む。kebiyamaさん自身は「ひっそりやっている単なる趣味」と言うが、ガス器具に特に興味のない私たちが見てもつい笑ってしまい、物語の新たな魅力を発見した気持ちにすらなる。

 この3人以外にも、SNSの発展あってこそ見られる市井の奇才が多くいる。「推し」を見つけて楽しんでみては?(編集部・川口穣)

AERA 2024年10月7日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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