美輪明宏さん(撮影/御堂義乘)

 ほほ笑みはこの世の通行手形です。朝のお散歩やお買い物途中に、すれ違った人がニッコリと笑顔を向けてくれたら、それだけで一日気分が良くなるものですよね。逆に、不機嫌な顔でにらまれたり、仏頂面をされたら不愉快な気持ちになります。笑顔は万国共通。人に安心感を与え、コミュニケーションを円滑にしてくれる魔法の力があります。

 人はつらいときや逆境にあるとき、表情を失ってしまいがちです。そんなときこそ「ルンルン」と唱えて、ほんのちょっぴり口角を上げ、ほほ笑んでみてはいかがでしょう。笑顔のまわりには、おのずとよい人、よい物事が集まってくるのです。笑顔を忘れずにいることが、今はつらくとも次の一歩を踏み出そうというきっかけにもなりますよ。

人間は「肉体」と「精神」からできている

「つらい」「苦しい」などの悩みや不安が大きくなるのは、精神が「感情」に支配されているからです。

 人間は、「肉体」と「精神」によって形作られています。肉体の健康を維持するのに必要なのが、食事や運動です。私自身も食事と運動はとても大切にしています。食事は野菜を中心におみおつけ、梅干し、納豆、たまご、ご飯は茶碗に軽く1杯いただきます。朝はラジオ体操をして、少しでも体を動かすことは欠かしません。

 では、健康的な肉体を維持するために、質のよい食べ物が必要であるのに対し、健康的な精神を維持するには、何をすればいいのでしょう。それは質のよい音楽、文学、美術などの文化に触れることです。近頃はインターネットやSNSによって大量の情報があふれるように流れてきています。情報を効率的に〝消化〟するために「コスパ」や「タイパ」などという言葉がもてはやされています。せっかくの映画を倍速で見たり、「ファスト映画」といって、10分程度の映像と解説で1本の映画を見たつもりになる。文化を粗末に扱うようになった結果、精神は栄養失調状態になりつつあります。

 日本の伝統芸能や伝統工芸などのアナログ文化は、精神に良質な栄養を与えてくれます。なかなか伝統文化に触れる機会がない人は、絵を描いたり読書をしたり、あるいは自然に触れてのんびりと旅を楽しむなど、趣味や生活の中に文化を取り入れることで、精神の栄養補給をしてはいかがでしょう。

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