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美輪明宏さん。89歳(撮影/御堂義乘)

 16歳で歌手としてデビューして以来、その唯一無二の歌声と美貌でファンを魅了し続けている美輪明宏さん。時代に流されない感性と豊富な経験をもとにした人生相談も長く続けています。人生の困難への立ち向かい方について、伺いました。発売中の「朝日脳活マガジン ハレやか 2024年10月号」(朝日新聞出版)より抜粋して紹介します。

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人生には「正負の法則」がある

 私はこれまで40年以上にわたり、テレビ、新聞、雑誌などのメディアで、たくさんの人の人生相談にお答えしてきました。「スポーツニッポン」で10年間にわたり連載してきた「美輪の色メガネ」が、『私の人生論 目に見えるものは見なさんな』(毎日新聞出版)として、一冊にまとまりました。個人的な悩みから政治経済、社会問題など読者からの質問にお答えしています。

 人生に悩みはつきものです。年齢や性別も関係ありません。むしろ年を重ね、人との関わりが増えたり、深くなったり、複雑になったりすれば、そのぶん悩み事は増えていくものだと感じています。人との関わりは、人生を豊かにするために必要なことですが、当然、煩わしいことも増えていくものです。

 そして、人生では誰もが良いことも悪いことも平等に起きています。「正負の法則」といって、何かを得れば何かを失うものなのです。年齢を重ねれば、精神は充実していきますが、肉体は衰え、健康のこと、病気のこと、お金のこと、老後のことといった悩みも増えていくものです。

 私は幼いころから「正負の法則」が身についているので、私自身は、人生の難題にぶつかってしまったとき、強く悲観したり深く苦悩することはありません。どんなに大変なことが起ころうとも、正負の法則によって、その後はきっとうれしいことが起こることを長い人生の中で経験しています。

宇宙は相反する二つの要素で成り立っている

 1945年8月6日、午前8時15分、広島に原爆が投下され一瞬で10万人以上の尊い命が奪われました。その3日後の8月9日、今度は私の住む長崎にも原爆が落とされました。私が10歳のときの出来事です。罪のない7万人の命が奪われ、それはまさに地獄のような光景でした。あの恐ろしい体験、当時見たものは決して忘れることはできません。

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16歳にして新宿で半ばホームレスに